福娘童話集 > 日本のこわい話(百物語)
百物語 第93話
雪女の恩返し
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むかしむかし、ある村はずれに、大金持ちの家と貧乏な家がありました。
ある、吹雪の夜です。
白い着物を着た美しい娘が、お金持ちの家の戸を叩きました。
「わたしは旅の者ですが、この吹雪で困っております。どうか、今夜一晩、泊めて下さいませんか?」
すると金持ちの主人は、
「はん。お前がどうなろうと、わしの知った事か」
と、ぴしゃりと戸を閉めてしまいました。
そこで娘は仕方なく、隣の貧乏な家に行って戸を叩きました。
「わたしは旅の者ですが、この吹雪で困っております。どうか、今夜一晩、泊めて下さいませんか?」
すると貧乏な家のお百姓さんは、
「さあ、早く中へお入り。大した物はないが、こんな所でよかったら、遠慮なく泊まっていくがいいよ」
と、娘をいろりのそばへ座らせて、火を大きくしてあげました。
そして、おかみさんも、
「外は寒かったでしょう。こんな物でよかったら、食べておくれ」
と、自分たちが食べる分のおかゆを、娘に出してくれたのです。
それを一口食べた娘は、
「ありがとうございます。おかげで生き返ったような気持ちです」
と、涙をこぼして喜びました。
それから、お百姓とおかみさんは、自分たちの布団を娘に貸してあげて、自分たちはわらの中にもぐって寝ました。
さて次の朝、お百姓さんとおかみさんは早起きして、娘のためにおいしい味噌汁をつくってあげました。
「さあ、朝ごはんが出来ましたよ」
おかみさんがふとんのそばに行ってみると、どうした事か、娘の姿がありません。
「はて、どこへ行ったのかしら? ・・・あら、この手紙は」
おかみさんは、布団の横に置かれた手紙に気づきました。
そして、その手紙を読んでみてびっくり。
そこには、こう書かれていたのです。
《わたしは雪女で、この冬を最後に寿命が尽きる運命でした。生きている最後に温かいもてなしを受け、わたしは人間の心であの世へ旅立つ事が出来ました。ありがとうございます。お礼を服の中に残しておきますので、どうぞ使って下さい》
そこでおかみさんがあわてて布団をめくってみると、娘が着ていた服がありました。
おかみさんがその服を手に取ってみると、服はぐっしょりと濡れており、そしてその服の中には、小判がたくさん入っていたと言うことです。
おしまい
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