百物語 日本の怖いお話し 福娘童話集 童話・昔話・おとぎ話の福娘童話集
- 広 告 -
 


福娘童話集 > 日本のこわい話(百物語)

百物語 第111話

へっついゆうれい

へっついゆうれい

 むかしは、どこの家の台所にも、土でできた、へっついという道具がありました。
 ひらたくいえば、かまどのことです。
 これがないと、ごはんがたけません。
 さて、ある町に、いせいのいい大工(だいく)さんがいました。
 あるとき、この大工さんの家のへっついが、こわれてしまいました。
 でも、新しいへっついを買うほど、お金がありません。
 そこで、古道具屋(→リサイクルショップ)へでかけました。
「おやじ、へっついのほり出し物はねえか?」
「へい、ございますとも。これなど、いかがでしょうか。お安くしておきます」
 おもったよりも安くかえたので、大工さんはホクホクしながら、そのへっついを台所にすえつけました。
「これで、あしたの朝は、おまんまがたけるってわけだ。ありがてえ、ありがてえ」
 さて、そのばん、大工さんはま夜中にふと、のどがかわいて目がさめました。
「どれ、水でも飲むか」
 台所におりて、水がめの水をグググッと、うまそうに飲んだ大工さんが、なにげなく、へっついに目をやると、
「ややっ!」
 青白いおに火が、チロチロしているではありませんか。
 おに火は、本当の火ではありません。
 ゆうれいが出てくるときのほのおです。
 大工さんはビックリです。
「えんぎでもねえ、うすきみのわるいへっついを買っちまったもんだ」
 大工さんがこわごわながめていると、今度は、そのへっついから、すすでよごれた男のうでが一本、ニューーッと出てきました。
「うわあー!」
 大工さんは、つぎの朝、さっそく古道具屋へ、へっついを返しにいきました。
「なにか、あやしいことでもありましたか?」
 古道具屋は、くびをひねりました。
「あったもなにも、このへっついから、ゆうれいが出るんだ。ほかのへっついととりかえてくれ」
「それはかまいませんが、あなたにかっていただいたこのへっついは、これまで何度もかわれては、すぐにもどされます。なんでも夜中におに火がもえたり、男のうでがでてくるとか」
「そのとおりだ! こんなへっついをしょうちでうるなんて、とんでもねえ。金をかえしてくれ」
 大工さんにいわれて、古道具屋は、なるほどとおもい、
「それなら、いっそのこと、たたきこわしてみましょう」
 古道具屋と大工さんは、へっついをうちこわしました。
 すると中から、小判が五まいも出てきたのです。
 そこで古道具屋が、このへっついのもとの持ち主をしらべると、持ち主の男は、しばらくまえに死んでいることがわかりました。
「せっかくためたお金を、どろぼうにとられないよう、へっついにぬりこんだまま死んでしまったので、それが気にかかって、ゆうれいとなって出てきたのだろう」
 古道具屋と大工さんは、坊さんを呼んで、死んだ男とへっついのくようをしてあげたそうです。

おしまい

 前のページへ戻る

お話しの移動

・ 福娘童話集
・ 100物語 (こわ〜い話)

百 物 語

・   1話  〜  10話
・  11話  〜  20話
・  21話  〜  30話
・  31話  〜  40話
・  41話  〜  50話
・  51話  〜  60話
・  61話  〜  70話
・  71話  〜  80話
・  81話  〜  90話
・  91話  〜 100話

・ 101話  〜 110話
・ 111話  〜 120話
・ 121話  〜 130話
・ 131話  〜 140話
・ 141話  〜 150話
・ 151話  〜 160話
・ 161話  〜 170話
・ 171話  〜 180話
・ 181話  〜 190話
・ 191話  〜 200話

・ 201話  〜 210話
・ 211話  〜 220話
・ 221話  〜 230話
・ 231話  〜 240話
・ 241話  〜 250話
・ 251話  〜 260話
・ 261話  〜 270話
・ 271話  〜 280話
・ 281話  〜 290話
・ 291話  〜 300話

・ 301話  〜 310話
・ 311話  〜 320話
・ 321話  〜 330話
・ 331話  〜 334話


ジャンルの選択
・有名な話 日本 世界
・こわい話 日本 世界
・わらい話 日本 世界
・感動話 日本 世界
・とんち話 日本 世界
・悲しい話 日本 世界
・ふしぎ話 日本 世界
・恩返し話 日本 世界
・恋物語 日本 世界