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百物語 第132話

旅人ウマ

旅人ウマ

 むかしむかし、あるところに、ふたりのわかものがいました。
 ひとりは金持ちむすこで、もうひとりは、びんぼうむすこでしたが、ふたりはたいそうなかがよくて、いっしょに旅にでることにしたのです。
 テクテクと歩いていたある日のこと、山のなかで日がくれてしまいました。
 ふとみると、一けんの家があります。
 ひとばんとめてもらおうとたのむと、おばあさんがでてきて、なかへ入れてくれました。
 ふたりがねた、真夜中のこと。
 びんぼうむすこは、ふと目がさめて、ねむれなくなりました。
 となりのへやには、まだあかりがついています。
「ばあさまは、まだおきているのか。少し、はなしでもしよう」
 そうおもい、なかをのぞいてみると、おばあさんが火の気のないいろりにかがみこんで、いっしょうけんめいに灰をかきならしていました。
 そのかっこうが、なにやら田をたがやしているのににているので、
「おかしなことするもんだな」
と、かげからみていました。
 しばらくするとおばあさんは、ふところからふくろをとりだして、タネのようなものを灰のなかにバラバラとまきました。
 すると、みるみる芽がでてきて、なえがはえそろいます。
 おばあさんは、それをつまんでぬくと、田うえをするときのようにうえかえ、あれよあれよといううちに、かぶが二倍にふえて、それがまもなく黄色になって、たわわないねになりました。
 こんどは、それをかりとって実を落とし、それを手にとってギュウギュウギュウと三かいにぎると、もうまっ白いもちができあがっていました。
 ふしぎなこともあるもんだと、かんがえていったむすこは、きゅうに、ドロ沼にひきずりこまれるようなねむ気がさしてきて、ふとんにのめりこむようにしてねてしまいました。
 やがて夜が明けて、目をさましたむすこが、あれはゆめだったのだろうかと、ボンヤリとかんがえていると、
「あついお茶入れましたで、どうぞ」
と、おばあさんによばれました。
 金持ちむすこは、もういろりばたにこしをおろして、おばあさんと茶をのんでいます。
 そのそばに、ゆうべのもちがあります。
 びんぼうむすこは、金持ちむすこのそばにとんでいき。
「あやしいもちじゃあ、食わんほうがええぞ」
 しきりにそでひっぱったりして、教えましたが、
「うまそうなもちじゃのう、ひとつごちそうになろうか」
と、ほおばってしまいました。
 すると、たちまち金持ちむすこのからだが、ガクンと前におれて、あっというまにウマになってしまったのです。
「やはり、ゆめではなかった!」
 びんぼうむすこは、わけもわからず、おばあさんのところをにげだしました。
 けれど、なかよしの友だちをほうっておくわけにはいきません。
 あっちのもの知り、こっちの医者にと、たすける方法をきいてまわりましたが、だれも知っているものはいません。
 とほうにくれて、道ばたの石にこしをおろしていると、白いひげのおじいさんがとおりかかりました。
 むすこは、さいごのたのみとおもって、
「もの知りなおかたとおもうておたずねします。どうぞ、ウマになった友だちをたすける方法を教えてください」
と、たのみました。
 すると、おじいさんは、
「ここから東にいくと、ナスの畑がある。そこで、一本の木に七つ実がなっているのをさがして、食べさせよ」
と、教えてくれたのです。
 むすこは、おじいさんのいうとおり、東に歩いていきました。
 すると、おじいさんのいったとおりに、ナス畑があります。
 大喜びで、一本の木に実が七つなっているのをさがしてまわりましたが、一本の木に五つなっているのしかみつかりません。
 そこで、また東に歩いてみました。
 するとまた、ナス畑がありました。
 そこには、一本の木に実が六つのはありますが、七つのはありません。
 しかたなくまた東へ、東へと歩いていくと、また畑がありました。
 そこでやっと、実が七つなっているのをみつけることができました。
「これで、たすけられる」
 むすこはナスをふところにねじこんで、走りに走ってもどってきました。
 おばあさんの家へつくと、ウマはちょうど、のらしごとからかえってきたところです。
 さんざんぶたれたり、はたらかされたりしたらしくて、全身ドロだらけで、せなかの皮はむけて、血がにじんでいます。
 むすこはウマに近づくと、
「これを食え、食えばもとにもどれる」
と、ナスをとりだしました。
 すると、ウマはサクサクと四つ食べましたが、あとは頭をふって食べようとしません。
 むすこは、
「みんな食わんと、人間にもどれんのだぞ」
と、むりやり口のなかにおしこんで食べさせます。
 そうして、ちょうど七つめを食べおわったとき、ウマは大きくいなないてたちあがると、頭、胴と、だんだんに金持ちむすこのすがたにもどっていきました。
 ふたりのむすこは、手をとりあってにげだして、自分たちの村へかえっていきました。
 そこで金持ちむすこは、びんぼうむすこにざいさんわけてやって、なかよくくらしたそうです。

おしまい

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