福娘童話集 > 日本のこわい話(百物語)
百物語 第136話
ゆうれいのでるやしき
むかしむかし、あるところに、とても正直な夫婦がいました。
でも、正直すぎて人にだまされてしまい、ひどい貧乏ぐらしです。
ごはんもろくに食べないので、赤ん坊がうまれても、おかみさんのおっぱいがまんぞくにでません。
そこで、
「よそへいって、はたらこう」
と、ある町の長者(ちょうじゃ→詳細)のやしきで、はたらかせてもらうことになりました。
長者はまじめにはたらく二人に感心して、一軒(けん)のやしきをあたえました。
「ふるいやしきだし、夜中(よなか)にゆうれいが出るとのうわさもあるが、ただであげるから、しんぼうしなさい」
「はい、ありがとうございます」
夫婦がそのやしきにすんでみると、なるほどたしかに、へんなことがつづきました。
かぜもないのに、行灯(あんどん→詳細)の火がきえたり、戸がガタガタとなったり、てんじょうからは、きもちのわるいわらいごえがきこえてきたりするのです。
「わしは、こんなやしきはごめんじゃ」
だんなはおそろしくなって、もとの村へかえろうといいましたが、しっかりもののおかみさんはへいきです。
「いくらあやしいことがあっても、わたしらには、なんのわざわいもないではありませんか。村へかえりたいなら、ひとりでかえりなさい。わたしは子どもと、ここにのこります」
そしてほんとうに、あかんぼうとふたりで、このやしきにのこりました。
すると、そのばんおそく、ゆかいたがギシギシとなったかとおもうと、目の前におじいさんとおばあさんのゆうれいがでてきて、
「わしらは、このやしきの宝をまもる者じゃ。おまえは、しっかりもので度胸(どきょう)もある。まったくたいしたもんじゃ。このやしきの宝はおまえにやろう。これで、もう心残りはない。あすからはしずかになるから、あんしんしてくらせ」
と、宝のありかを教えてくれました。
おかみさんが次の朝、ゆうれいにおしえられたところをほってみると、なんと千両箱がいくつも出てきました。
正直者のおかみさんは、そのことを長者に知らせて、出てきた千両箱をすべて差し出しましたが、長者はニッコリ笑って、
「これは、まじめで正直なおまえにくださったものだ。わしはいらないから、おまえたち家族で使いなさい」
と、言ってくれました。
「はい、ありがとうございます」
おかみさんは村に帰ってだんなを呼び戻すと、そのお金でしあわせに暮らしました。
おしまい
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