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百物語 第265話
墓をくずしたたたり
岡山県の民話 → 岡山県情報
むかしむかし、備中の国(びっちゅうのくに→岡山県)に、草のおいしげった広い土地がありました。
ここを耕せば田んぼになるというので、大勢の人たちが集まって耕すことになりました。
何日もかかって、やっと半分ほど耕したとき、大むかしのお墓らしい小さな山が見つかりました。
「どうしたものか。墓をこわすと、ひどいたたりがあるというぞ」
そこで人々は、代官のところへ相談に行きました。
すると代官は、
「死んだ人間より、生きている人間の方が大事だ。かまわないから、こわしてしまえ!」
と、言うのです。
「まあ、お代官さまがそう言われるのでしたら」
そこでみんなで、お墓らしい山をくずしてしまいました。
ところが不思議なことに、次の日になると、くずしたはずの小さな山がすっかり元通りになっているのです。
「これはきっと、墓の中にいるご先祖さまのしわざに違いない。もう、山をこわすのはやめよう」
人々はそう言いましたが、代官は承知しません。
代官は、家来たちをつれてきて、
「なさけないやつらめ。お前たちが出来ないのなら、わしがこわしてやる」
と、いうなり、みんなで山をくずして、土を掘り起こしたのです。
すると土の中から、大きなつぼが出てきました。
古いつぼですが、なかなかに立派なつぼです。
代官はそれを見て、ニヤリと笑いました。
「これは墓ではなく、だれかが財宝を埋めたに違いない。しめしめ、中の宝はわしの物だ」
代官はつぼのそばにいくと、家来に命じてふたを開けさせました。
そのとたん、つぼの中から黒い煙がもくもくとわき出たかと思うと、
ゴロゴロゴロ!
と、かみなりのような音がひびきわたりました。
代官も家来もびっくりして、ガタガタとふるえています。
まわりをとりかこんでいた人たちは、大あわてで逃げていきました。
「いかん。わしらも逃げるぞ!」
ブルブルとふるえていた代官たちも、その場から逃げ出そうとしましたが、今度は、
ドカーン!
と、いう音とともに、つぼの中からまっ赤な炎が吹きあがって、代官や家来たちをあっという間に焼き殺してしまったのです。
遠くからこれを見ていた人たちは、
「なんて恐ろしい。やっぱり、墓をこわしてはいけないんだ」
と、言って、二度とここへは近寄らなくなりました。
そして新しい代官が来ても、ここを耕すことは決してなかったそうです。
おしまい
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