百物語 日本の怖いお話し 福娘童話集 童話・昔話・おとぎ話の福娘童話集
- 広 告 -
 


福娘童話集 > 日本のこわい話(百物語)

百物語 第282話

幽霊をせおった若者

幽霊をせおった若者
京都府の民話京都府県情報

 むかしむかし、京の町のある墓場に、不思議な墓石が二つありました。
 その一つの墓石は、夜になると青白い幽霊火に包まれます。
 そして、もう一つの墓石は夜になると、
「恐ろしや〜、恐ろしや〜」
と、女の人の泣き声をはなつのです。
 だから日が暮れるとこの辺りには、だれ一人近づきません。
 そこであるとき、若者たちが集まって、
「だれか、その怪しい墓石まで行って、不思議の謎をとくものはおらんか?」
と、いうことになりました。
 すると、武芸をこころえのある、一人の若者が進み出て、
「よし、おれが行こう」
と、さっそく、墓場へ出かけていきました。
 あたりは真っ暗な上、しょぼしょぼと雨も降り出してきました。
「正直怖いが、何が出ようとも、決して逃げ出してはいかんぞ」
 若者は、何度も自分にそう言い聞かせて、墓場に入っていきました。
 するとうわさ通り、
「恐ろしや〜、恐ろしや〜」
と、墓石から声が聞こえてくるのです。
 若者は勇気を出すと、その墓石に向かってたずねました。
「いったい、何が恐ろしいのだ? よければ、おれがわけをきこう」
 すると墓石の後ろから、美しい女の幽霊が現れて、
「はい。実はこの世に、勇気のある人がいるかどうかを確かめようと、こうして毎晩出ているのです。あなたに勇気があるなら、あそこに燃えている墓石のところまで、わたしを連れて行ってくださいな」
と、頼みました。
 幽霊でも、美人なら怖くありません。
 若者はうなずくと、
「わかりました。では、まいりましょう」
と、幽霊の手を引いて、幽霊火が燃えている墓石まで連れて行ってやりました。
 すると女の幽霊は、
「しばらく、待っていてください」
と、燃えている墓石の中に、すーっと消えてしまいました。
 しばらくすると墓石の中で、何やら幽霊同士の話し声が聞こえてきます。
 やがて墓石から出てきた女の幽霊は、さっきの美人とはうってかわって、みるも恐ろしい般若(はんにゃ)の顔でした。
 さすがの若者も、全身の震えが止まりません。
 女の幽霊は、
「わたしを再び、墓石まで、おんぶしてくださいな」
と、若者の首に氷のような手をまきつけてきました。
 若者は怖さのあまり、気を失いかけましたが、
(ここで気を失っては、男の恥!)
と、勇気をふりしぼって幽霊を背負いました。
 やがて元の墓石に戻って若者が幽霊をおろすと、幽霊ははじめの美人に戻って、
「ありがとう。あなたのような勇気のある人に会うことができ、もう思い残すことはありません。どうぞ、この袋をおとりなさい」
と、若者に小さな袋を手渡して、墓石に消えてしまいました。
 若者は急いで仲間のところに駆け戻ると、さっきの墓場での出来事を話して、幽霊からもらった小さな袋を開けてみました。
 するとその袋の中には、金貨や銀貨が何枚も入っていたということです。

おしまい

 前のページへ戻る

お話しの移動

・ 福娘童話集
・ 100物語 (こわ〜い話)

百 物 語

・   1話  〜  10話
・  11話  〜  20話
・  21話  〜  30話
・  31話  〜  40話
・  41話  〜  50話
・  51話  〜  60話
・  61話  〜  70話
・  71話  〜  80話
・  81話  〜  90話
・  91話  〜 100話

・ 101話  〜 110話
・ 111話  〜 120話
・ 121話  〜 130話
・ 131話  〜 140話
・ 141話  〜 150話
・ 151話  〜 160話
・ 161話  〜 170話
・ 171話  〜 180話
・ 181話  〜 190話
・ 191話  〜 200話

・ 201話  〜 210話
・ 211話  〜 220話
・ 221話  〜 230話
・ 231話  〜 240話
・ 241話  〜 250話
・ 251話  〜 260話
・ 261話  〜 270話
・ 271話  〜 280話
・ 281話  〜 290話
・ 291話  〜 300話

・ 301話  〜 310話
・ 311話  〜 320話
・ 321話  〜 330話
・ 331話  〜 334話


ジャンルの選択
・有名な話 日本 世界
・こわい話 日本 世界
・わらい話 日本 世界
・感動話 日本 世界
・とんち話 日本 世界
・悲しい話 日本 世界
・ふしぎ話 日本 世界
・恩返し話 日本 世界
・恋物語 日本 世界