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福娘童話集 > 日本のこわい話(百物語)
百物語 第297話
キジムナーの仕返し
北海道の民話 → 北海道情報
むかしから古い木には、木の精が宿ると言われていました。
その木の精は、北海道ではキジムナーと呼ばれていました。
そのキジムナーは赤ちゃんくらいの大きさで、いつも飛んだりはねたりする元気な子どもで、なぜか魚の左目がとても好きでした。
そしてキジムナーと釣りに行くと魚は取り放題で、キジムナーと友達になると大金持ちになれると言われていました。
さて、ある若者がこのキジムナーと友達になりました。
若者はキジムナーと一緒に釣りに出かけ、すぐに舟が沈みそうなほどの魚を釣りました。
若者がとても喜ぶので、キジムナーもうれしくなって、もっと喜ばせたいといつも思っていました。
若者がおいしい木の実を食べたいと言えば、どこからかキジムナーはとってきます。
若者が育てているウリはキジムナーのおかげで、いつも大きくて立派でした。
ある日、若者とキジムナーは散歩をしているときに、大金持ちのお屋敷の庭に美しい娘がいるのを見かけました。
ふとキジムナーは、いたずらをしたくなりました。
そして、
「ねえ、あの娘の魂をとってみせようか」
と、いうと、お屋敷の庭にしのび込んだのです。
若者が木の下で待っていると、キジムナーは白く輝く玉を両手に包んで戻ってきました。
「ほら、これがあの娘の魂だよ」
若者がびっくりしていると、キジムナーは満足そうに笑いました。
そして娘の魂を木の股に置いたまま、海へ釣りに行こうと誘いました。
若者は走っていくキジムナーの後ろ姿を見ながら、娘の魂をそっとたもとにしまいました。
次の日、大金持ちの娘が急な病気で死にそうだといううわさが、若者の耳にもはいりました。
そこで若者は娘の魂を持って、大金持ちのお屋敷へ行きました。
そして娘の心臓の上に魂を乗せて、一心にお祈りしました。
するとキラキラ輝く魂は、ゆっくりと体の中へ入っていき、娘は元気をとり戻したのです。
「あなたは、娘の命の恩人です!」
大金持ち夫婦は喜んで、若者と娘を結婚させることにしました。
そしてそれを知ったキジムナーは、すっかり命の恩人になりきっている若者に腹を立てて、若者に文句を言いに行きました。
ところが若者は、キジムナーの姿を見るなりイの字の形に結んだススキの穂を見せたのです。
イの字の形に結んだススキの穂は、キジムナーが大嫌いな物で、見ると怖くてたまらなくなるのです。
怖くなったキジムナーは、
「わあー」
と、言って逃げました。
「いつもススキの穂を持っているつもりだな! 仕返しに、お前の大切なウリにひどいことをしてやるぞ!」
頭にきたキジムナーは、若者が大切に育てているウリにお灸をすえてまわることにしました。
それ以来、ウリに黒くて丸いキズができると、キジムナーのお灸と言うようになったそうです。
おしまい
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