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百物語 第313話

座敷童

座敷童
岩手県の民話 → 岩手県の情報

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スタヂオせんむ

 むかしむかし、ある春の夕暮れ、川べりに、おかっぱ頭の愛らしい二人の女の子が座っていました。
 そこを通りかかった若者が、二人のさびしそうな様子と、手に持っている朱塗りのお膳(ぜん)を不思議そうに見くらべながら、
「お前たち、どこから来て、どこへ行くのだ?」
と、たずねると、女の子は声をそろえて、
「山口の孫左衛門(まござえもん)のところから、気仙(けせん)の稲子沢(いなごさわ)へ行くところ」
と、答えます。
「孫左衛門? あの金持ちのか? して、何で家を出たのだ?」
「あの家は、もうすぐつぶれるからよ」
 女の子はそう言って、若者を見上げます。
 それを聞いた若者は、この女の子たちの正体に気づきました。
(この女の子たちは、あの有名な座敷(ざしき)わらしに違いない。座敷わらしが出ていったとなると、山口の孫左衛門は、もうお終いだ。そして次の長者は、気仙(けせん)の稲子沢の者に違いない)
 それからまもなく、孫左衛門の一族は、キノコの毒にあたって死に絶えたのです。

 その頃、稲子沢に住む働き者の百姓で、与治右衛門(よじうえもん)という男が不思議な夢を見ました。
 夢枕に、白い装束のおじいさんが立って、
「これからすぐに旅に出よ。山を越えて川を渡り、野原を行くと古い館の跡がある。そこに咲いている三十三の花をつけた山百合(やまゆり)の根元に、お前の幸運が埋まっておるぞ」
と、告げたのです。
 目を覚ました与治右衛門は、
(秋の終わりに、百合の花が咲いているのも妙な話しだが)
と、思いながら、それでも馬を引いて出かけていきました。
 山を越えて北上川(きたがみがわ)を舟で渡り、みぞれまじりの北風が吹き荒れる野原を行くと、急に馬が立ち止まりました。
 見れば足元に、三十三の花をつけた山百合の花が咲いています。
「これだな!」
 そこで花の根元を夢中で掘ると、黄金がぎっしりつまったつぼが七つも出てきたのです。
 あとから知ったのですが、そこは、生城寺館(しょうじょうじだて)の跡地だったそうです。
 こうして長者になった与治右衛門の家には、あの座敷わらしの一人が住みついて、家はますます栄えました。

 それから長い年月が過ぎた、ある雪の朝、長者の使用人の一人が、おかっぱ頭の可愛い女の子が長者の家から出て行くのを見たそうです。
 すると見るまに長者の家は傾いて、哀れな最後を迎えたということです。

おしまい

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