福娘童話集 > 日本のこわい話(百物語)
百物語 第322話
タヌキつき
京都府の民話 → 京都府の情報
むかしむかし ある山里に、おじいさんとおばあさんが住んでいました。
ある日、おじいさんが病気になったので、その日はおばあさんが山へしばかりに行きました。
すると山道に、何か黒い物が転がっています。
「おや? あれはなんじゃろう?」
おばあさんが近づいてみると、それは黒く干からびたタヌキのミイラでした。
今年の冬は寒さが厳しかったので、エサを探している途中で死んでしまったのです。
「まあまあ、可哀想に」
おばあさんはそのタヌキのミイラを抱いて山を下りると、そのタヌキのミイラを海に流してやりました。
さて、そのあとおばあさんは家に帰ったのですが、何だかいつもと様子が違います。
気になったおじいさんが、おばあさんに話しかけますが、おばあさんは返事もせずに、家にある食べ物を次から次へと手づかみで食べていくのです。
そこでおじいさんは、友だちの和尚さんのところへ相談に行きました。
「和尚さま、ばあさんが、ばあさんが変なのです」
そこで和尚さんがおじいさんの家に行ってみると、確かにおばあさんの様子が変です。
まるで、キツネかタヌキの様に、四つんばいで食べ物をバリバリと食べているのです。
そこで和尚さんは数珠をすり合わせながら、念仏を唱えました。
するとおばあさんの影が、タヌキの影に変わったのです。
「やはり、タヌキが憑いておったか」
和尚さんはおじいさんと力を合わせておばあさんを柱に縛り付けると、近所から借りてきた犬をしばられたおばあさんにけしかけたのです。
「うぅーっ、わんわんわん!」
すると犬に吠えられてびっくりしたおばあさんは、ころりと気絶してしまいました。
そして気絶したおばあさんから、黒いタヌキの影が出て来たのです。
和尚さんがその影に念仏を唱えると、その影は消えてなくなりました。
「よし、これで大丈夫」
その後、正気を取り戻したおばあさんから、タヌキのミイラを海に流した事を聞いた和尚さんは、
「無念に死んだ動物を海に流しても、成仏できずに舞い戻ってくる。時には、さっきの様に人に取り憑くことがある。もし動物のミイラを見つけたら、そこに穴を掘って埋めてやりなさい。そして、運悪く動物に取り憑かれてしまったら、犬をけしかけてやると良い。取り憑いた動物は犬を怖がって、逃げてしまうからな」
と、教えてくれたそうです。
おしまい
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