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2月9日の日本の昔話
もち屋の禅問答
粢粑店頭家个禪問答
にほんご(日语) ・ちゅうごくご(中文) ・日语&中文
福妹日本童話集 (臺灣客語.海陸腔) 翻譯:鄧文政(ten33 vun55 zhin11)
むかしむかし、あるところに、とても大きなお寺がありました。
頭擺頭擺,某隻地方有一座非常大个寺廟。
寺はとても立派ですが、困った事に、この寺の和尚(おしょう)ときたら、勉強が嫌いな上に物知らずです。
寺廟非常派頭,毋過盡無結煞个事情,聽講廟肚个和尚毋好讀書所以無麼个才學。
さて、ある日の事、一人の旅の坊さんがやって来て、
有一日、有一個雲遊个和尚到來。
「それがし、禅問答(ぜんもんどう)をいたそうとぞんじてまかりこしたが、寺の和尚どのはおられるかな」
「𠊎想摎該兜進行禪問答,毋知大和尚有在麽?」
と、ちょうど玄関の掃除をしていた、この寺の和尚さんに尋ねたのです。
問該掃玄關个和尚。
さあ問答と聞いて、和尚さんはビックリしました。
一聽到問答,和尚嗄著驚,
相手は、仁王(におう)さまの様な大男。
對方係像金剛恁高大个男仔人。
しかも、あちこちの寺を回り歩いては問答を仕掛け、一度も負けた事はござらぬという顔です。
另外,來來去去各地寺廟摎人辯論像形毋識輸過。
(こりゃあ、どえらい事になったわい。一体どうしたもんじゃろう。・・・そうじゃ。もち屋の六助(ろくすけ)がよい)
(這恁大个事情,到底仰結煞呢?...恁仰好啦,來去尋粢粑店个六助。)
と、思いつき、ともかく旅の僧を本堂に案内して、
想著這,無論仰般請雲遊和尚落正殿去招待。
「和尚さまは、ただいま、お留守にございますが、近くにまいっておられますので、さっそく呼んでまいりましょう」
「住持和尚這下無在,在這就近定定,黏皮去尋佢轉來。」
言い終わると転げる様に、もち屋の六助の家へ行きました。
講煞,遽遽走去粢粑店个六助屋下。
「六助どの。たった今、これこれ、しかじか。ぜひわしの身代わりになって、問答をやって下され」
「六助仙,頭下,恁樣,等等。你定著愛替𠊎出面去摎佢辯論。」
と、両手を合わせて頼みました。
雙手合十拜托。
日頃から信心(しんじん→神仏を思う気持ち)深い、もち屋の六助は、
平常一旦對神佛就虔誠个粢粑店頭家六助
「へえ、和尚さまのお為なら」
「he~,若係為著住持和尚」
と、引き受けました。
接受佢个拜託。
六助は和尚さんの部屋で着替えると、しずしずと本堂に入って旅の僧と向かい合いました。
六助去住持和尚个房間換著和尚衫,恬恬行落正殿,摎雲遊和尚面對面。
和尚さんが隠れて様子を見ていると、さっそく、もち屋と旅の僧の問答が始まりました。
看著住持和尚囥起來後,兩儕黏時開始辯論。
「白扇(はくせん)さかしまにかかる東海(とうかい)の天」
「白扇顛倒頭掛在東海个天頂」
旅の坊さんが、口を開きました。
雲遊和尚開口了。
雪をいただいた富士山(ふじさん)が、白い扇(おおぎ)を逆さまにかけた様に海にうつっているが、そのながめはいかに?
分白雪弇等个富士山,像白扇仔顛倒頭掛等樣,映在東海上,該景色仰般?
と、聞いたのですが、訳の分からないもち屋の六助は、うんともすんとも言いません。
聽到這句話,毋過聽毋識麼个意思个粢粑店頭家六助,無點頭回答。
すると、旅の僧が、
所以,雲遊和尚
「和尚どのは、無言(むごん)の行(ぎょう)でおわすか?」
「住持和尚,你係無言修行麽?」
と、聞きました。
開嘴問:
「・・・・・・」
「......」
六助は、それにも答えません。
六助還係無應佢。
二人の間で、無言の行が始まりました。
二儕開始無言修行。
しばらくして旅の僧が右手を上げて、人差し指と親指とで小さな輪を作れば、六助はそれを見て両手を上げて大きな輪(わ)を作りました。
過一下仔,雲遊和尚正手擎起來,用蛇頭指摎手指公比一個細圓圈仔,六助看阿著煞煞擎起兩隻手比一個大輪仔。
すると旅の僧は、おそれいったという様子で丁寧に頭を下げます。
過後,該雲遊和尚盡敗勢樣謙虛个頭犂下去。
そして今度は、人差し指を一本突き出して見せました。
這下換伸出一支蛇頭指分人看,
六助は素早く、五本の指をパッと開きます。
六助遽遽伸出五支手指。
旅の僧は、また丁寧に頭を下げました。
雲遊和尚還係謙虛个頭犂下去。
今度は三本の指を、高く差し上げました。
這下換三支手指擎高高,
するとそれを見た六助は、アカンベエをしたのです。
看到該个六助黏時做鬼面,
それを見た旅の僧は、あわてて両手をついて、
雲遊和尚看啊著,慌慌張張兩手扶地泥,
「ははーっ」
「ha ha~。」
と、頭をたたみにすりつけると、逃げる様にして寺から出て行きました。
額頭揬在榻榻米頂幫一下像逃難樣舂等出去寺廟外背。
和尚さんは、ホッと胸をなで下ろしました。
住持和尚輕輕梳下胸脯。
それにしても今の問答は、何とも訳が分かりません。
雖然經過兩儕比手畫脚,今晡日个辯論,到底係麽个完全無了解。
そこで和尚は、小僧を呼んで、
所以住持和尚喊細沙彌來,
「お前、今の僧が泊まっておる宿(やど)ヘ行って、訳を聞いて来い」と、言いつけました。
講:「你啊,去雲遊和尚戴个旅社打探道理。」
宿にやって来た寺の小僧さんを前にして、旅の僧は冷や汗を拭きながら言いました。
當細沙彌个面,雲遊和尚緊捽冷汗緊講:
「いやはや、わしも天下の寺でらを歩いて問答をいたしたが、今日ほど、えらいめおうた事はない。
「唉呀,𠊎行過天下恁多廟寺去摎人辯論,毋識堵到像今晡日程度恁高。
まずわしが、この様に輪を作って、
最先𠊎用手比隻輪仔
『太陽は、いかに?』
と、問いかけたのじゃ。
問佢:『日頭,仰般?』。
すると和尚どのは、
過後,住持和尚
『世界を照らす!』
と、大きな輪を作って見せて下された。
用手比个大輪仔『照世界!』分𠊎看。
次に、
『仏法は、いかに?』
續等問:『佛法,仰般?』
と、人差し指を差し出すと、パッと五本の指を出されて、
用蛇頭指伸出來比。佢就伸出五支手指
『五界を照らす!』と、答えなさる。
應講:『照五界』。
負けてはならじと、三本の指を出して、『三仏身(さんぶつしん)は、これいかに?』
と、問いもうした。
毋認輸伸出三支手指問:『三佛身,這仰般?』。
すると和尚どのは、『目の下にあり』と、答えなされたのじゃ」
住持和尚應講『在目珠前就有』」,
そこまで言うと旅の僧は、しみじみと小僧さんの顔を見て、
講到這下,雲遊和尚詳細看細沙彌个面。
「お前さんはまだ年が若いで知るまいが、
「你還後生可能有兜事情你毋知,
三仏身とは、すなわち法身(ほっしん)・報身(ほうしん)・応身(おうしん)のご三体で、ほっしんとは宇宙の法理であって、光明かがやく仏さま。
三佛身係法身、報身、應身三種,法身係宇宙个法理,金晶枠亮个佛祖。
ほうしんとは、世のもろもろの悪を清め、われわれ人間はじめ全ての生物をお救いなさる阿弥陀如来(あみだにょらい)さま。
報身係為洗淨世間各種罪惡,救世間所有个生物个阿彌陀佛。
おうしんとは、ときに応じて、われわれを導く為に現れなさるお方、いわばお釈迦(しゃか)さまじゃ。
應身係為著引導𠊎兜隨時現靈个釋迦牟尼佛。
このもったいないお三方が、和尚どのの目下にあるとは、ああ、なんと、なんと」
這三儕全部係住持和尚个後輩,啊,了不起,了不起。」
旅の僧は涙ぐんで、小僧さんの前に手をつくと、
雲遊和尚目汁濫泔在細沙彌面前跪拜。
「まことに、まことに、あの様なお方にお目にかかるばかりか、問答などをいたしまして、いやはや、面目(めんもく)しだいもございませぬ」
「實在、實在,毋單淨見到這種人,還摎佢辯論,唉呀,實在無面子。」
と、わびるように言いました。
摎佢會失禮。
小僧さんは、
(ヒェー!あのもち屋の六助さんが)
と、ビックリして寺ヘ帰って来ました。
細沙彌想,(hie~!該個粢粑店頭家六助) 嗄著驚,走倒轉去廟寺。
すると、これはまたどうした事か、六助さんは和尚さんを前にしてカンカンに怒っています。
過後,這到底又發生麽个事情哪?六助先生在和尚師傅面前閼到蹦蹦跳。
小僧は六助さんの前に手をついて、ていねいに、
細沙彌在六助面前跪拜,盡謙虛問講:
「もし、もし。六助さま。一体、どうなさいました?」
と、尋ねると、もち屋の六助は、
「噯、噯、六助大人,到底,仰會恁樣?」
粢粑店頭家六助講:
「なさいましたも、クソも、ないもんだ。えーい、わしゃ、この年まで色んな人におうてきたが、
今日の坊主ほど、ずうずうしい奴におうた事はないわい」
「無該種事。e~i,𠊎啊,食到恁老閱人無數,毋識堵到像今晡日恁仰个和尚,毋知見笑面皮恁賁。」
「・・・?」
「...?」
「あのクソ坊主め。手真似で小さな輪を作って、
『お前のもちは、これくらいか?』
と、聞きおった。
「該個孤盲和尚,用手比細圈仔,問講:『你个粢粑恁大仔係麼?』
わしは腹が立って、こんちくしょうとばかり両手で、でっかい奴を作って見せたわい。
𠊎盡閼用手比恁大恁大分佢看。
すると今度は、人差し指を差し出して、
『それはいくらか?』
と、聞く。
過後就伸出蛇頭指比,問『該幾多錢?』
わしが、
『五厘じゃ!』
と、五本の指を出せば、
𠊎伸出五支手指比『五厘!』,
坊主め、三本の指を出しおって、
『三厘にまけろ』
と、ぬかしおった。
和尚出三支手指比『便宜兜,三厘。』在該講價。
あんまり腹が立ったもんで、わしゃ、アカンベエをしてやったわい」
と、言ったのです。
還閼,𠊎就作鬼面。」恁仰講。
おしまい
煞了
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