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3月16日の百物語
(3月16日的日本鬼故事)
幽霊の黒髪

幽霊の黒髪
黑髮幽靈

日本語 ・日本語&中国語

♪音声配信(html5)
朗読者 ; ☆横島小次郎☆

むかしむかし、越後の国(えちごのくに→新潟県)の関山(せきやま)という村に魚野川(うおのがわ)という川があって、この川にはいつも仮ごしらえの橋がかかっていました。
到好久以前、越後國(現新潟県)關山村有個魚野河、上面就有個臨時搭到的橋。

なぜ仮ごしらえかというと、この川は流れが早いので、ちょっと大雨が降っただけでも橋が流されてしまうからです。
為甚麼是臨時的、這河流的急、一個雨、橋就過米得了。

それでいつも、仮ごしらえの橋がかかっているのでした。
一直都是這麼二不掛五的、臨時掛到這裡的。

でも仮ごしらえの橋では足元が悪く、冬の寒い日などは橋が凍ってしまうため、足を滑らせて川に落ちた人が毎年何人も命を落としていたのです。
這橋好不穩當、本來就險、冬天結冰在一滑、一飆就是一條人命案子、每年要死好多。

この関山村のはずれに、六十才を越える源教(げんきょう)というお坊さんがいました。
村邊上有個六十歲老和尚。

源教は寒行(かんぎょう→寒さをしのんでする修行)として、毎晩、念仏を唱えて鐘をチンチンと打ち鳴らしては村をまわります。
苦行僧、天冷、每天晚上還要幫村巡一圈、邊走邊敲邏。

そしてその帰り道は必ず魚野川の橋のたもとに立って念仏を唱え、川でおばれた人たちの成仏を願うのです。
回去之前一定要先到橋邊上超度一哈落水亡魂。

ある夜、源教が橋のたもとで念仏を唱えていると、急に雲が出てきて月の明かりを隠してしまいました。
有個晚上、和尚一樣到橋上念經、天上雲一哈就是幫月光一掩。

(はて、何やらあやしい気配がするぞ)
怎麼這麼不舒服、感覺。

そう思いながらも念仏を続けていると、川の中から青い炎がめらめらと燃え上がってきたのです。
不過也是繼續念、河裡面就開始燒、青色的火焰狂冒。

(なんと! おぼれ死んだ者の魂であろうか?)
甚麼?水鬼啊

源教は念仏に合わせて、鐘を鳴らし続けました。
和尚繼續念、還敲起鐘來了。

そしてふと橋を見ると、いつの間にか橋の上に女の人が立っていたのです。
再一看橋上、甚麼時候站到一條女的。

女の人は三十才くらいで、青ざめた顔に長い黒髪で、腰から下はボーッとかすんで見えません。
三十歲左右、臉是白的頭髮是黑的、下半身看不清楚。

(これは、この橋で命を落とした人の幽霊に違いない)
這肯定就是從橋落下去的女鬼

女の幽霊は、すーっと源教の前に近寄ると、細い声をふるわせて言いました。
女的就往和尚這邊靠、港話時一直到抖。

「わたくしは、隣村のキクと申す者でございます。
也是先介紹自己來歷、曉得是旁邊村子的菊

夫にも子にも先立たれ、ただ一人、後に残されてしまいました。
男的、兒、都死完了、就剩自己一個了。

女の一人身では暮らしも立たず、知り合いを頼っていく途中、この橋から落ちておぼれてしまったのです。
女的一個人不就只能投靠親戚、路上過從橋上絆死了。

人知れず死んだわたしには、誰からもひとすくいの水もたむけてはもらえず、世に捨てられた悲しさに毎日泣きくずれておりました。
就這麼到死到米人曉得的地方、得不到任何人關心、每天不舒服就哭。

しかし今夜は四十九日目(→死んでから四十九日目に、閻魔大王が地獄行きか天国行きかを決めると言われています)で、ちょうどあなたさまのありがたいお念仏もあり、
今天剛好是死的四十九天、也是有幸有和尚到旁邊念經(死人四十九天閻王就判你上天還是下地獄。)

『ああ、これでやっと成仏できる』
也是可以解脫了。

と、思いましたが、何とわたしのこの黒髪が成仏の邪魔をして、まだ人の世をさまよっております」
但是幽靈的黑頭髮、現在變成了阻礙、所以還到人世徘徊。

幽霊はそう言うと顔にそでを押し当てて、さめざめと泣き出しました。
幽靈就用袖子掩到臉、一直哭。

「さようであったか。
既然這個樣子

ではわたしが、その黒髪をそってしんぜよう。
我幫你頭髮剪了就是

明日の夜、わたしの住む関山(せきやま)いおり(→そまつで小さな家)へきなさるがよい」
你明天晚上就來關上的草廬來邏我。

その言葉を聞くと女の幽霊は小さく頷き、そしてスーと消えました。
女鬼也是點頭、一哈就不見了。

次の日。
第二天

源教は友だちの紺屋七兵衛(こんやしちべえ)を呼びました。
和尚又喊來一個人、紺屋七兵衛、是自己認得到的。

そして、昨日の幽霊の話しをして言いました。
跟他港昨天晚上的事。

「のう、七兵衛どの。
七兵衛啊

おキクさんは、今夜必ず来るだろう。
菊她今天晚上肯定就要過來的。

あの様な幽霊は、決して約束をたがえぬからな。
這條鬼一定不能辜負啦。

そしてこれを機会に、あの橋が危険である事を皆に知らせたい。
這個機會也是幫橋危險的事讓大家都曉得。

だが証拠がのうては、幽霊などと言っても誰も信じてはくれぬ。
米得證據你港這條也米人相信。

そこで七兵衛どのに、頼みがあるのじゃ。
所以我也是請你

七兵衛どのは、村でも評判の正直者。
別個都港你老實不騙人。

どうか幽霊が約束通り現れた事の証人に、なってはくれまいか」
想喊你當個見證人。

「はい、承知しました。わたしはどこかに隠れて、その幽霊を見届ける事にいたしましょう」
我就躲到哪裡看你們搞好吧。

「うむ、頼むぞ」
對頭。

その夜、源教は新しいむしろを仏壇の前にしいて、幽霊が座る場所を作りました。
晚上、和尚也是邏一鋪新席子、鋪靈堂前面、跟幽靈準備的。

そして七兵衛を、仏壇の下の戸だなに隠しました。
七兵衛就躲到靈堂低下的櫃子裡頭。

「うむ、遅いなあ」
怎麼還米來

もう真夜中ですが、幽霊の現れる様子はありません。
夜已經深了、還是米看到幽靈。

源教は、いつの間にか、いねむりをはじめましたが、突然、ぞくぞくっと寒気を感じて目を覚ましました。
和尚人都開始躺了、突然空氣一寒、醒了。

(おおっ!)
驚聲

目を開けると、いつの間にかおキクの幽霊が来ていて、仏壇に向かって頭をたれ、むしろの上にきちんと正座をしています。
眼睛一開、菊已經臉對到靈堂坐上席子了

源教は気持ちを落ち着かせると、おキクの幽霊に声を掛けました。
和尚自己也是先冷靜、在過去喊菊。

「おキクどの。よく、おいでくだされた」
客套一哈、港你來了啊。

「・・・・・・」
おキクは黙って、頷くだけです。
菊就只點頭、不港話

「では、はじめるぞ」
我們開始啦。

源教は立ちあがって手をゆすぐと、小さなたらいに水をくんできました。
和尚先站起來洗手、再用個小盆子裝水。

そしてかみそりを持つと、おキクのそばへ近寄ります。
再就取小刀走到菊邊上了。

肩ごしにたれたおキクの長い黒髪は、びっしょりと、むしろをぬらしていました。
黑髮過肩垂到的、全是水、幫席子全打溼了。

手にとると、しずくがたれます。
用手去碰也是到滴水。

(このぬれた黒髪が、成仏の邪魔をしておるのじゃな。だが、それも今夜で終わりじゃ)
這頭髮溼這個樣子、怪不得不好安息、今天也就最後一天啦。

源教は、おキクの髪をそりながら、ふと、こんな事を思いました。
和尚一邊剪頭髮一邊想

(この髪の毛を少しとっておけば、幽霊が来た証拠になるのでは)
要是幫頭髮稍微留幾根、也可以當個證據啊

しかし源教が髪の毛をそると、不思議な事にそり落とすあとからあとから髪の毛はおキクのふところの中へ入っていくのです。
但是一旦落到地上的頭髮、都自己往菊的懷裡面跑。

まるで見えない糸でもついていて、引っ張っているようです。
就像是看不到的線引導頭髮一樣。

(このままでは、証拠が残らぬ)
這就米的證據啦

源教は自分の指に髪の毛をしっかりからめてから、そりはじめました。
和尚就幫頭髮纏自己手指頭上、再開始剪。

それでもそり落とした髪の毛は指の間をすり抜けると、おキクのふところへと入っていきます。
但是只要一斷、頭髮又是一滑、溜走了。

ただの一本も、源教の手には残りません。
最後是一根都摸不到。

やがて頭をそり終えると、おキクは源教の方を向いて、やせ細った白い手を静かに合わせておがみました。
頭剪完了、菊也是對到和尚做揖、幫兩個小細白手合到。

「・・・ありがとうございました。これで成仏できます」
感謝和尚。

おキクは小さくつぶやくと、おがんだ姿のままスーと消えてしまいました。
菊小聲幫話港完、就那麼個樣子不見了。

おキクが消えた後、七兵衛が戸だなから出てきました。
菊走了、躲到的七兵衛也就從靈堂底下鑽出來的。

そして源教の前へ、にぎった左手を差し出しました。
幫握到的手往和尚面前一持、

「源教さま、これを」


見てみると七兵衛の手の中には、幽霊のぬれた髪の毛が、ほんの少しだけ残っています。
七兵衛的手裡面還捏到二根幽靈毛的。

「おおっ、残っておったか。わずかでも証拠があれば、皆に橋が危険である事を伝えられる」
還留到有啊、這麼到就可以讓大家相信了、讓他們曉得橋好危險。

源教が幽霊の髪の毛を受け取ると、七兵衛が言いました。
和尚取來毛這麼跟七兵衛港。

「源教さま、わたしはこれまで、幽霊などは迷信と思っていました。
和尚、我還一直不信邪。

しかし今夜幽霊に出会い、死んでからの世界がある事を知りました。
今天才曉得真的有鬼。

これからの人生は、神仏に捧げたいと思います」
自己現在也要弘揚正法去了。

「うむ。それならわたしも、出来る限りの事をさせてもらおう」
那我也幫你

その後、 七兵衛は出家(しゅっけ→家を出て仏門に入る事)すると、お坊さんになりました。
後面、七兵衛也出家當和尚去了。

そして源教は関山に塚(つか)を建てると、幽霊の髪の毛を納めて橋の危険をみんなに知らせました。
再來、和尚到關山建了個祠堂、幫女鬼的頭髮供到裡面、以警示世人。

その塚は毛塚(けづか)と呼ばれ、いまでも残されているそうです。
祠堂還留落到到了現在、名字就喊毛塚

おしまい
结束

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