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      第 33話 
         
           
         
嫁殺し田  
長野県の民話 → 長野県情報  
       むかしむかし、長寿の村として有名な長野県の松川村に、意地の悪いおばあさんと嫁が暮らしていました。  
 おばあさんは嫁が嫌いだったので、何かにつけて文句を言ったり、わざときつい仕事させたりしたのです。 
 
 ある年の田植えの日。  
 おばあさんは嫁を呼びつけると、怖い顔でこんな事を言い出しました。 
「うちはね、田植えは一日でやってしまうのが決まりだよ。わしは腰の具合が悪いから、おめえが一人で植えろ」 
「あの、でも、一人で一日は、とても」  
「なんだい! 逆らうのか!」  
「・・・・・・」  
「いいな、一人で植えるんだぞ!」  
「・・・はい」 
 嫁さんはなくなく、苗を持って田んぼに出ました。  
 田植えを一人が一日で終わらすなんて、とても無理な話です。  
 それでもやらなかったら、嫁さんはおばあさんにどんな仕打ちをされるかわかりません。  
 嫁さんは、それこそ死にものぐるいで苗を植え続けました。 
 
 やがてお天道さまも西に傾いて、気がつくと夕暮れでした。  
 それでも嫁さんは、必死で苗を植えました。 
 手も足もしびれて思うように動きませんが、歯をくいしばって頑張りました。  
 そうしてとうとう、あともう少しというところまできたのです。 
(もう少しだわ) 
 その時、嫁さんはつい、股ぐらの間からお天道さまを拝んでしまったのです。  
 するとそのとたん、嫁さんはバッタリ倒れてしまいました。 
 股の間からお天道さまを拝んだため、バチが当たってしまったのです。  
 かわいそうに嫁さんは、そのまま死んでしまいました。 
 
 その後、その田んぼは『嫁殺し田』と呼ばれるようになりました。  
 今も松川村のはずれには、その嫁殺し田が残っているそうです。  
      おしまい 
           
             
         
          
          
       
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