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第 44話

鬼ヶ島の目一

鬼ヶ島の目一
鹿児島県 種子島の民話鹿児島県の情報

 むかしむかし、ある村に、両親が亡くなって一人で暮らしている娘がいました。
 ある日の事、娘は山に椎(しい)の実を拾いに行ったのですが、そこへ運悪く鬼ヶ島から赤鬼がやってきて、娘を大きなカゴに入れると連れ去ったのです。
 その様子を多くの村人が見ており、娘はカゴの中から村人に助けを求めたのですが、村人たちは鬼が怖くて、娘を助けようとはしなかったのです。

 鬼は娘を入れたカゴ背負ったまま海辺に行くと、つないでおいた黒舟に乗り込みました。
 その舟は鬼の宝で、舟についているネジを巻くと、千里を走る事が出来る舟だったのです。
 舟は、あっという間に鬼ヶ島へ着きました。
 鬼ヶ島へさらわれた娘は、自分が殺されるのではないかと心配していましたが、鬼は娘に乱暴することなく、娘をとても大切にしたのです。
 鬼のおかげで何不自由ない生活を送ることが出来ましたが、しかし日がたつにつれて、娘の心の中には、故郷に帰りたいという気持ちが強くなっていったのです。
 そんなある日、娘と鬼の間に男の子が生まれました。
 しかしその生まれた子どもは、何と目が一つしかない一つ目だったのです。
 娘はそれを見てびっくりしましたが、でも、たとえ一つ目であっても自分が産んだ子どもは可愛くて、娘はその子どもに『目一』と名付けると、大事に大事に育てました。

 やがて目一は、すくすくと大きくなり、とても頭の良い子どもになりました。
 頭の良い目一は、母親が自分の生まれ故郷に帰りたいと思っている事に気づいたのです。
 目一は母親と二人きりの時を見計らって、母親に言いました。
「お母さん、自分の生まれた国へ帰りたいんでしょう? 二人でお母さんの国へ帰ろう」
 それを聞いた母親は、目に涙を浮かべて言いました。
「目一、ありがとう。でもね、もういいの。お母さんは、お前とここで暮らすのが一番だと思うの」
「でも、お母さんは国へ帰りたいんでしょう?」
「そうね。でも、お母さんの国はこことは違い、お前が行っても良いことはないわ。・・・さあ、もうこの話は、終わりにしましょうね」
 さて、それから何年か経って、目一は立派な若者へと成長しました。
 鬼の中では一番頭が良いので、ゆくゆくは鬼の大将になるのではないかといわれる程です。
 そんなある日、目一は再び母親に言いました。
「お母さん、ぼくはお母さんの国へ、行ってみたいのです」
「でも、お母さんの国はこことは違い、お前が行っても良いことはないと言ったでしょう。お前は、ここにいる方が幸せになれるのですよ」
「はい。行くと後悔するかもしれませんが、でも、ぼくはお母さんの国をこの目で見てみたいのです」
 それを聞いた母親は、目一が本気で言っている事がわかると、二人で鬼ヶ島から逃げ出す決心をしました。
 そして鬼たちに気づかれないように出発の準備をすると、黒舟に乗って人間の国へ旅立ったのです。

 その後、人間の国へ着いた二人は、一つ目とその母親として人間に捕まり、大阪の町の見せ物小屋に売り飛ばされて、一生を見せ物として過ごすことになったそうです。

おしまい

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