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第 54話
ばば焼 4月14日
兵庫県日高町の民話 → 兵庫県情報
むかしむかし、京の都に、幸姫(ゆきひめ)という美しいお姫さまがいました。
幸姫は後鳥羽天皇(ごとばてんのう)の皇子、雅成親王(まさなりしんのう)のお妃でしたが、その親王が幕府に捕らえられて但馬の高岡の里というところで住む事になったのです。
親王と離ればなれになった幸姫は毎日泣きながら暮らしていましたが、三月初めのある朝、幸姫は親王に会いたい一心で侍女を連れて高岡の里を尋ねる事にしたのです。
女の二人旅は、とても大変なものでした。
二人は一ヶ月以上も重い足を引きずりながら歩き続け、やっとの思いで松岡の里までたどり着いた頃には、幸姫の体はとても弱っていました。
でも、高岡の里はもうすぐのはずです。
侍女は川辺で洗濯していた老婆に、高岡への道を尋ねました。
するとその老婆は意地悪く笑い、
「高岡の里はまだまだ先さ。まだ村を四つも越さねばならないので、女の足では二十日はかかりますな」
と、うそを答えたのです。
それを聞いた幸姫は、ポロポロと涙をこぼしました。
「私の体では、もう無理です。死後、南風となって高岡に行きます」
幸姫はそう言うと、川へ身を投げて死んでしまいました。
その日の夜、急に雨雲が現れて大雨と南風が強く吹き、またたく間に松岡の里は洪水に襲われました。
「これは、幸姫のたたりに違いない!」
「あのばあさんが、うそをついたせいだ!」
幸姫の怒りを恐れた村人たちは、幸姫にうそをついた老婆を捕まえて川原で火あぶりにしました。
この事件が起きた四月十四日は、不思議な事に今でも南風が吹いてきます。
そしてこの土地では四月十四日の夕方になると、わらで作った老婆の人形を焼く『ばば焼き祭り』が今でも続けられています。
おしまい
→ ばば焼き祭り
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