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第 96話
ナメクジ土俵
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むかしむかし、ある村では日照り(ひでり→長い間、雨がふらない事)が続いて、田畑の作物がほとんど枯れてしまいました。
食べる物が少なくなり、お百姓(ひゃくしょう)さんたちは、すっかりふさぎ込んでいました。
この村では毎年四月にすもう大会が行われていましたが、土俵(どひょう)をつくる元気もなくなってしまい、誰もすもう大会の事を口にする者はいません。
このままでは、長年続いたすもう大会は中止になるでしょう。
そんな、ある朝の事です。
畑仕事に行こうとしたお百姓が、お地蔵(じぞう)さんの前の原っぱでキラキラ光っている物を見つけたのです。
「はて。なんだろう?」
お百姓が原っぱに行ってみると、大きな土俵(どひょう)のまわりの縁のところが日の光に当たって丸く光っていたのです。
「おおっ、誰かが立派な土俵をつくってくれたぞ」
お百姓は喜んで、ふと土俵のかたわらの草むらに目をやると、そこには何百匹ものナメクジが死んでいました。
お百姓はビックリして、村人たちにこの事を知らせました。
「そういえば、きのうの晩遅くにあそこを通ると、何かがボーッと光っていたな。
月の光が草の夜露(よつゆ)に当たっていると思っていたが、このナメクジたちが体のネバネバで土俵をつくっておったんだな」
「これは、祭りにすもう大会をしろという事じゃないか?
きっと神さまがナメクジたちに命じて、この土俵をつくらせたんじゃ」
「うむ、そうかもしれん」
お祭りの日、元気を取り戻したお百姓さんたちは、すもう大会をおおいに楽しみました。
そして自分たちに元気を与えてくれた土俵に、『ナメクジ土俵』という名前をつけたという事です。
おしまい
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