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第 150話
キツネの雨ごい
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むかしむかし、ある村の裏山に、キツネの家族が住んでいました。
子ギツネがたくさんいるので、お母さんギツネは食べ物探しで大忙しです。
ある日の事、お母さんギツネがいつものように川岸を歩いていると、向こうから石狩長者と呼ばれる長者がやって来ました。
長者は捕まえた魚を柳の木の枝にしばって、運んでいる最中でした。
「あら、おいしそうな魚だ事」
お母さんギツネがそれを見ていると、歩き疲れた長者は木に背中をあずけて、グーグーと昼寝を始めました。
お母さんギツネは長者に見つからないように、こっそりと柳の木の枝から一匹の魚を抜き取りました。
「こんなにたくさんあるのだから、一匹ぐらいいなくてもわからないわね」
しかし、お母さんギツネが魚を持ち帰ったあと、目を覚ました長者が魚の数を数え始めたのです。
「ひい、ふう、みい、よお、・・・ありゃ、一匹足りないぞ。さては、誰かがわしの魚を盗んだな。おーい、村にいる神たち、山にいる神たち、わしの魚を盗んだふとどき者に、どうかバチをあててくれー!」
長者があんまり文句を言うので、困った神さまたちは、お母さんギツネの所へ来て言いました。
「キツネのお母さんよ。困った事をしてくれたな。キツネも神の仲間なのに、なんだって人間の魚を盗んだりしたんだ。おかげで長者から、『はやくバチをあてろ』と、朝も昼も夜も文句が来ているのだ。すまないが、ここから出て行ってもらうよ」
こうしてキツネの親子は、裏山から追い出されてしまいました。
さて、追い出されたお母さんギツネは、くやしくてなりません。
「可愛い子どもたちに食べさせる為に、たった一匹とっただけなのに。長者が文句を言ったおかげで、わたしたちは住む家をなくしてしまったわ。ああ、くやしい。こうなれば、あの長者に仕返しをしてやる」
そこでお母さんギツネは、長者の住む村に行くと、
「雨よ降れ! 雨よ降れ! どんどん降って、石狩の村をめちゃくちゃにしてしまえ!」
と、言いながら、雨ごいをしたのです。
するとたちまち雲が出て来て、ザーザーと大雨が降り出した。
お母さんギツネはそれでも止めずに、今度は石狩の長者の家の前に行って、さらに激しく雨ごいをしたのです。
雨はますます激しくなって、長者の家は、雨水に押し流されそうになりました。
びっくりして家から出て来た長者は、大雨の原因が雨ごいをしているキツネだとわかり、やっと事の次第に気がついたのです。
「しまった! 魚を盗ったのはキツネの神さまだったのか。そうと知っていれば、あんなに文句を言う事はなかったのに。キツネの神さま、私が悪うございました。あやまりますから、どうかこの雨をやませて下さい! このままでは、石狩の村が全部流されてしまいます!」
長者があやまったので、お母さんギツネは雨ごいをやめました。
そして長者はおわびのしるしに、自分が持っている山をキツネの家として差し出したので、それからキツネの親子は平和に暮らすことが出来たそうです。
おしまい
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