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第 270話
スズメの贈り物
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むかしむかし、あるところに、とても心のやさしいおじいさんとおばあさんが住んでいました。
子どもがいない二人は、一羽のスズメを子どもの様に可愛がっていました。
「さあ、今日もいい子だね」
「今日も可愛いね」
おじいさんとおばあさんは暇さえあれば鳥かごを開けて、出てきたスズメを手や肩に乗せて遊びます。
スズメのおかげで、おじいさんもおばあさんもさびしいと思った事はありませんでした。
そんなある日の事、いつもの様に鳥かごを開けるとスズメが飛び出して、そのまま空高くへ登ってしまったのです。
おじいさんとおばあさんは、あわてて空を見上げて言いました。
「どうしたんだい? 何かあったのかい?」
「お願いだから、帰って来ておくれ」
けれどもスズメはまっすぐ飛んで行き、とうとう姿が見えなくなりました。
おじいさんとおばあさんは悲しくて、涙をポロポロとこぼしました。
すると雲の中からさっきのスズメが現れて、二人の頭の上までおりてくると小判をジャラジャラとまき散らしたのです。
「お金なんかいいから、早くもどってきておくれ」
でもスズメはそのままどこかへ飛んで行き、二度と帰ってはきませんでした。
おじいさんとおばあさんはとても悲しがりましたが、けれどもスズメの小判で何不自由なく暮らせるようになりました。
さて、この話を聞いた、隣の欲張りじいさんと欲張りばあさんが言いました。
「スズメを育てて空に放すと、恩返しに小判をくれるのか。いっひひひひ。これで、おれたちも大金持ちだ」
「そうですね。ではさっそく、スズメを捕まえに行きましょう」
欲張りじいさんと欲張りばあさんは山へ行くと、さっそく一羽のスズメを捕まえました。
そしてエサも与えずに何日も鳥かごに閉じ込めてから、鳥かごを開けました。
スズメはあわてて逃げ出して、空高く飛んで行きました。
欲張りじいさんと欲張りばあさんは、逃げて行くスズメに言いました。
「さあ、早く小判を持っておいで!」
「隣の家よりも、たくさんの小判を持っておいで!」
「持って来ないと、ひどい目に合わせるぞ!」
すると雲の中からさっきのスズメが現れて、二人の頭の上までおりてくると何かをバラバラと落としました。
「よし、これで大金持ちだ!」
「ええ、何不自由なく暮らせますね!」
二人が喜んで両手を広げると、落ちてきたのは何とスズメのうんちやおしっこだったのです。
こうして欲張りじいさんと欲張りばあさんは、顔中がスズメのうんちやおしっこだらけになってしまいました。
不思議な事に、このスズメのうんちやおしっこは、いくら洗っても顔から取れなかったそうです。
おしまい
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