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第 283話
サルの顔はなぜ赤い
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むかしむかし、ある山に、一匹のサルが住んでいました。
「腹がへったな、何か食べ物はないかな?」
サルが里へ行くと、おじいさんとおばあさんがおもちをついていました。
「もちをついて神さまにお供えすれば、わしらはもっともっと長生きが出来るぞ」
「そうですね。長生きするのは、良いことです」
サルは木のかげからもちつきを見ながら、何とかおもちを手に入れる方法はないかと考えました。
ふと見ると、近くの木の葉にアマガエルがいました。
「おい、アマガエルどん。お前、もちを食いたくはねえか」
サルが言うと、アマガエルはうなずきました。
「ゲーコ。食いたい、食いたい」
「そうか。それじゃ、わしの言う事をきけよ。もちをたくさん、食わせてやるからな」
「ゲーコ、きく、きくぞ。どうすればいい?」
「簡単じゃ。
お前は家の裏へ行って、赤ん坊の泣くまねをするんじゃ。
あのじいさんとばあさんは、前から子どもを欲しがっていた。
子どもの泣き声を聞くと、すぐに飛んで行くだろう。
そのすきに、わしがうすごともちをいただいて来るから、後で山分けすればいい」
「ゲーコ。なるほど、なるほど。それなら、赤ん坊の泣き声の、まねをしてくる」
アマガエルは、ピョンピョンと家の裏へはねていくと、
「ほんぎゃあー、ほんぎゃあー」
と、赤ん坊の泣きまねをはじめました。
カエルにしては、なかなかに上手です。
「おじいさん。赤ちゃんの泣き声がしますよ」
「本当だ。誰かが、子どもをすてていったのかもしれん」
おじいさんとおばあさんは、大急ぎで家の裏へ見に行きました。
「しめしめ。うまくいったぞ」
サルは大喜びで木のかげから飛び出すと、おもちの入ったうすをかついでやぶの中にかくれました。
そしてやぶの中でつきたての熱いおもちをフーフー言いながら食べていると、アマガエルがやって来て言いました。
「ゲーコ。山分けだ。わしにも、食わしてくれ」
アマガエルはそう言って、うすに飛び乗りましたが、すぐにサルが手で払いのけました。
「うるさいな、あっちへ行け!」
「ゲーコ。山分けのはず。山分けのはず」
アマガエルは何度もうすに飛び乗りますが、その度にサルが手で払いのけます。
「あっちへ行け! このもちは、全部おれの物だ」
サルがブンブンと手を振っていると、その手の先についた熱いおもちがうすから飛び出して、サルの顔にぺたりとはり付いてしまいました。
「わあーっ、あち、あち、あちちちちちち!」
サルは顔をやけどして、顔がまっ赤になってしまいました。
その時からだそうです、サルの顔が赤くなったのは。
おしまい
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