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第 285話
逃げた、きな粉
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むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。
ある日の事、おじいさんが庭を掃除していると、一粒の豆がころころと転がって来ました。
おじいさんは、家の中にいるおばあさんに尋ねました。
「ばあさま、ばあさま。豆が一粒出てきたぞ。庭のすみにでもまいておくか?」
するとおばあさんが、家の中から答えました。
「でも庭には、食いしん坊のニワトリがいますよ」
「そしたら、小屋の中にしまっておこうか?」
「そうですね。でも、小屋には大きなネズミが住んでいますよ」
「では、床の間に置いておこうか?」
「床の間には、黒猫がやって来ますよ」
「そうか。ならいっその事、豆の粉にしてしまおう」
おじいさんはそう言って鉄の鍋で豆を炒り始めたのですが、炒れば炒るほどその豆がどんどん大きくなって、ついには鍋いっぱいの大きさになったのです。
「はあ、何とも不思議な豆だな。しかしこれでは大きすぎて、石臼ではひけんぞ」
そこでおじいさんは臼と杵を持ってきて、その大きな豆をつき始めました。
こうして豆は、五升のきな粉になったのです。
「ばあさま、きな粉が出来たぞ。これを台所にしまっておくか?」
おじいさんが尋ねると、おばあさんが答えました。
「台所には、イタチが来ますよ」
「それなら、天井裏にしまっておくか?」
「天井裏には、コウモリが住んでいますよ」
「床下は?」
「床下では、虫がわきますよ」
「そうか。なら、ふとんに入れておこう」
そこでおじいさんは、きな粉を抱いて寝る事にしました。
さて、その真夜中の事です。
きな粉を抱きながら寝ていたおじいさんは、寝ながら大きなおならをしました。
ぶーーーっ!
するときな粉たちはびっくりして、
「くさいくさい。じいさまの屁は、何てくさいんだ!」
と、おじいさんの布団から逃げ出したのです。
するとそれを見たニワトリやネズミや黒猫やイタチやコウモリたちがやって来て、逃げるきな粉たちをみんな食べてしまったという事です。
おしまい
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