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第 326話

天狗の縁結び

天狗の縁結び
愛知県の民話愛知県の情報

日本語 ・日本語&中国語

 むかし、尾州の国(びしゅうの国→愛知県)の犬山と言うところに、一軒の酒屋がありました。

 ドンドンドン、ドンドンドン
 ある真夜中の事、誰かが表の戸を叩くので店の小僧が戸のすき間からのぞいてみると、背の高さが一丈(いちじょう→約三メートル)もある大男が立っていたのです。
「わあ、わあ、わあー!」
 びっくりした小僧は、すぐに主人を起こしに行きました。
 すると話を聞いた主人は、
「それはただ者ではない。すぐに戸を開ける様に」
と、小僧に命じて、素早く身支度をして店に出ました。

 身をかがめるようにして店の中に入って来た大男は異常に鼻が高く、一本歯の下駄をはいています。
 主人が、大男に言いました。
「手前は当店の主です。何かご用でしょうか?」
 すると大男は、丁寧に頭を下げて言いました。
「この様な夜分に、まことにすまないが、酒を飲ませてはくれぬか」
「わかりました。ここは酒屋ですから、酒ならいくらでもお出ししましょう」
 主人は一升ますに、お酒をなみなみとついで差し出しました。
 すると大男は、それをゴクリゴクリと一気に飲み干しました。
「うまい酒だ! すまぬが、もう一杯」
 大男は二杯目も一気に飲み干すと、さらに何度もおかわりを続けて、ついには大きな酒樽を空にしてしまいました。
「いやあ、久しぶりの酒なので、すっかり飲んでしまった」
 大男は顔をまっ赤にして、とても満足そうです。
「ところでご主人、あいにくと酒代を持ちあわせておらぬ。その代わりに望みがあれば、なんなりと言ってくれ。必ず叶えてつかわすぞ」
 それを聞いた主人は、にっこり笑って言いました。
「ありがとうございます。これといった望みもありませんが、実は先年、妻を亡くしまして、出来る事なら気立てのいい働き者の妻を迎えたいと思っています」
「それはさみしい事だな。よし、わかった。そなたの望み、きっと叶えてつかわそう」
 大男はそう言うと、ふらつく足どりで帰って行きました。

 主人と大男のやり取りを見ていた小僧が、主人に言いました。
「よろしいのですか? あの大男、ただ飲みですよ」
 すると主人は、小僧の頭をなでながら言いました。
「あのお客はおそらく、天狗であろう。これからも度々訪ねて来るかもしれんが、決して粗末にあつかってはならぬぞ」

 それから何日かが過ぎた真夜中、あの大男が再び訪ねて来ました。
 知らせを聞いた主人は、さっそく酒をなみなみとついで大男に差し出しました。、
「これはこれは、お客さま、ようこそおいでくださいました。さあ、まずは一杯」
「いや、今夜は酒を飲みに来たのではない」
 大男はそう言って、ふところから人形の様な物をつまみ出しました。
 よく見るとそれは二寸(にすん→約六センチメートル)ほどの小さな人間で、しかも美しい娘の姿をしています。
「お客さま、これは?」
 主人が目を丸くしていると、大男はその小人を主人に手渡して言いました。
「これが、そなたの新しい妻じゃ。よい娘だから、大事にしてやってくれよ」
 その瞬間、大男の姿がふっと消えて、小人が見る見る大きくなって普通の人間になりました。
 主人も小僧もびっくりして、言葉も出ません。
 大きくなった娘はひどく疲れた様子で、ぐったりしています。
「とりあえず、この娘さんのふとんを用意しないと」
 主人と小僧は空き部屋にふとんを敷いて、その娘を寝かせる事にしました。

 翌朝、主人が娘の寝ている部屋に行ってみると、娘はもう起きていました。
 娘は主人に頭を下げて言いました。
「ゆうべは、ありがとうございました。おかげで、すっかり元気になりました」
「それは良かった。・・・それで、お前さんは、いったいどこから、どうしてやって来たのかな?」
「はい、わたしは江戸の新川というところに店を開いている酒屋の娘でございます。
 昨夜、不思議な大男が現れまして、
『お前の嫁ぎ先が、決まったぞ』
と、言うなり、わたしを外へ連れ出しました。
 そして大男に不思議な術をかけられて小人にされたわたしは、あなたさまの店に連れてこられたのです」
「なるほど、あの天狗どのは、あなたの店にも行かれたのだな。
 それにしても、わたしが妻を欲しいと言ったばかりに、あなたに大変な迷惑をかけてしまったようだ。
 とにかく、あなたを江戸にお送りしましょう」

 さっそく主人は娘を連れて江戸に行くと、娘の両親に今までの事情を説明しました。
「わたしが天狗にうかつな事を言ったために、娘さんに大変な迷惑をおかけしました」
 頭を下げる主人に、娘の両親が優しく言いました。
「娘がいなくなって心配しておりましたが、なるほど、そう言う理由でございましたか。
 しかし、天狗さまがわざわざ娘を連れて行ったのは、あなたと娘の縁がよほど良いからに違いありません。
 娘も年頃です。
 どうかこれを縁に、娘をもらって頂けないでしょうか?」
「えっ? 娘さんをわたしに?」
  主人が娘に目をやると、娘は頬を赤く染めて主人に頭を下げました。
  心優しい主人の事を、娘は好きになっていたのです。

 こうして主人と娘は、夫婦になりました。
 天狗の目利きは確かで、二人は親子ほども年が離れていましたが、いつまでも仲良く幸せに暮らしたという事です。

おしまい

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