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3月12日のイソップ童話
馬と兵隊
戦争のあいだ、兵隊は自分の馬に、ムギをたっぷり食べさせました。
つらいことも、あぶないことも、いっしょにきりぬて、たたかってくれる馬だから、だいじにしていたのです。
しかし戦争がおわると、馬はつまらない仕事につかわれたり、重い荷物をはこばされるだけで、エサも麦ワラしかもらえなくなりました。
そのうちに、また戦争がはじまりました。
兵隊をあつめるラッパが鳴りひびくと、主人は馬にくらをつけ、武器を持って、戦場にいくために馬にまたがりました。
ところが、馬はすっかり弱っていて、ひと足歩くたびにころんでしまうのです。
馬は主人にいいました。
「あなた、こんどは騎兵でなしに、歩兵になって下さい。わたしは、むかしはりっぱな馬だったけれど、あなたのおかげでロバになってしまいました。また戦争になったからといって、いったんロバになったものが馬にもどれはしませんよ」
のどかで平和なときにも、きびしくてつらい日のことを、わすれてはなりません。
おしまい