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11月4日のイソップ童話
  
  
  
サルとイルカ
    むかしギリシャの人たちは、航海するときにマルタ犬という小型のイヌやサルをペットとして、いっしょに船にのせていました。
    さて、ある人がサルを連れて船旅をしていました。
    アッチカ地方のスーニオン岬にさしかかると、はげしい嵐になり、船はてんぷくして、のっていた人たちは泳いで逃げました。
    サルも人間のまねをして逃げました。
    一ぴきのイルカがそれを見て、人間かと思って助けにいきました。
    サルのからだの下にもぐって、背中にのせて陸まではこんでやろうとしたのです。
    イルカはこうして、ピレウスの港のそばまで来ました。
    ピレウスはアテネの町に近い港です。
    イルカはサルに、
  「あなたはアテネに住んでいるのですか」と、聞きました。
  「ああ、そうだよ。だからアテネの町の有力者にも親せきが何人もいるんだ」
  「それでは、ピレウスもよく知っていますか」
    サルはピレウスというのは人の名まえだと思ったので、
  「ああ、よく知っている。あいつはぼくの親友だよ」
  と、とくいそうにいいました。
    イルカは、こんなバカなほらふきを助ける気がしなくなったので、わざと海に深くもぐって、サルをおぼれさせてしまいました。
  
    この話は、本当のことは知らないくせに、他人にほらを吹いて本当だと思わせようとする人を、いましめています。
おしまい