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3年生の日本昔話(にほんむかしばなし)
みそさざいは鳥の大将(たいしょう)
むかしむかし、まんまる山という山の中で、鳥たちが集(あつ)まって、にぎやかに大えんかいをしていました。
そこで、烏たちは、こんな話をしています。
「のう、みんな。鳥たちのなかで、いったいだれが大将(たいしょう)かのう?」
「鳥の大将(たいしょう)か? そりゃあやっぱり、タカさまでねえか」
「うん、タカさまが、いちばん強い」
「空を飛(と)べば、いちばんはやいし、ねらったえものは、ぜったいのがさない」
「そうだ、鳥の大将(たいしょう)は、タカさまだ」
みんながうなずきあっていると、鳥のなかでいちばん小さなみそさざい(→スズメ目ミソサザイ科の鳥で、大きさは5センチ)が、酒(さけ)によったいきおいで、ついこんなことをいってしまったのです。
「鳥の大将(たいしょう)はタカだって? とんでもない。大将(たいしょう)はこのおれさまだい! タカが強いだって? からだがでっけえだけで、頭はカラッポさ」
ほかの鳥たちは、おどろいたのなんの。
「これこれ、そんなしつれいなことを、いってはいかん」
「だって、ほんとうだもの。どうじゃ、タカ。おらとおめえとどっちがつええか、勝負(しょうぶ)してみるか?」
はじめは相手(あいて)にしなかったタカも、みそさざいがあんまりしつこいので、だまっていられなくなりました。
「みそさざいよ、そこまでいうのなら、ひとつためしてみよう。勝負(しょうぶ)は山のイノシシをやっつけることだ。イノシシをやっつけてこそ、鳥の大将(たいしょう)といえる」
「いいとも、やってやろうじゃないか」
ほかの鳥たちは、あきれていいました。
「タカさまも、みそさざいさんも、そんなばかなこと、おやめなさいよ」
すると、みそさざいは、
「おめえ、おらが負(ま)けると思って、やめろなんていうのか? おらあ、タカなんかに負(ま)けねえぞ!」
「よし! きまった。あした、三角山のてっぺんに、おてんとさまがのぼったら、はじめることにしよう」
さて、朝になって目がさめると、みそさざいは青くなりました。
「どうしよう。酒(さけ)によったいきおいとはいえ、とんでもないことを言ってしまった」
なんとかあやまろうと、タカのところへいったのですが、
「おや、みそさざい。早いじゃないか。さあ、きのうのやくそくを守(まも)ってもらおうか。ほれ、ちょうどイノシシがやってきた。おまえからいけ!」
もう、あとにはひけません。
みそさざいは死(し)んだ気になって、イノシシめがけてとびかかりました。
でも、イノシシはビクともしません。
ぎゃくに、イノシシがみそさざいにとびかかってきたのです。
みそさざいは逃(に)げましたが、おいついてきたイノシシの鼻(はな)の穴(あな)の中にスッポリ。
さあ、おどろいたのはイノシシです。
「く、苦(くる)しい〜っ!」
イノシシは、あちらこちら走りまわり、とうとう木にぶつかって、
ドシーン!
目をまわして、しまいました。
タカやほかの鳥たちが、みそさざいのようすを見にいくと、なんということでしょう。
みそさざいが、のびたイノシシを前に、とくいそうにむねをはっているのです。
「どうです! さあ、こんどはタカさんのばんですよ」
「ようし、おまえがイノシシ一頭なら、おれは二頭やっつけてやる」
タカはヒラリとまいあがると、二頭のイノシシにむかっていきました。
「鳥の大将(たいしょう)は、このおれさまだ!」
タカは、ならんで走る二頭のイノシシにまたがり、二頭を連れ去(つれさ)ろうとしました。
そのとたん、二頭のイノシシが左右に分かれたからたいへんです。
タカは、まっぷたつにひきさかれてしまいました。
鳥たちはあっけにとられ、それからわっとかんせいをあげました。
「みそさざいの勝(か)ちだ!」
「鳥の大将(たいしょう)は、みそさざいだ!」
それからです。
烏のなかでいちばん小さなみそさざいが、鳥の大将(たいしょう)といわれるようになったのは。
おしまい
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