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1月9日の小話
大声のしらみ、小声のわたくず
店の主人とこぞうが、浅草(あさくさ)の観音(かんのん)さまにおまいりにいったときのことです。
にぎやかな仲見世(なかみせ→社寺の境内などにある商店街)どおりを歩いていますと、こぞうがとつぜん、主人の背中を指さし、大きな声でいいました。
「あっ、だんなさま。だんなさまの背中に、しらみ(→詳細)がついております」
「バカ! そんなことは、小声でいえ! 恥ずかしいだろ」
主人はあわててこぞうにいうと、こぞうは、声を小さくしていいました。
「まちがえました。これはしらみではなく、ただのわたくずでございました」
「バカ! それなら大きい声でいえ!」
おしまい