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3年生の江戸小話(えどこばなし)
きいておいた
庭(にわ)の梅(うめ)の木に、今年、初(はじ)めて、うぐいすがとんできて、よい声で鳴いたのをきいた男が、じまん顔で、となりの家にやってきていいました。
「いま、庭(にわ)で、今年一番のうぐいすの声をききやした」
すると、となりの男は、
「おまえのところは、おそいなあ。おれんところなんざあ、きのうも、おとといも鳴いてらあ」
それをきいていた、向(む)こうどなりの男は、
「それはおそい。四月に入ってきいたんでは、おそい。おれなんざあ、先月のすえにきいたぜ」
そこへ、負(ま)けずぎらいの横町(よこちょう)のいんきょがとおりかかり、
「なに、先月だと。おそい、おそい」
「ほう、さすがは、ごいんきょ。で、ごいんきょは、いつですかい?」
するとごいんきょは、じまんげに。
「きいておどろけ。わしなんか、去年(きょねん)の春に、きいておいたわ」
おしまい
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