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7月14日の小話

へぼうらない

へぼうらない

 えきしゃ(うらない師)が、いなかへやってきました。
 すると、ひゃくしょうのおやじさんが、
「なくなったものがあるのだが、どこへいったか、うらなってもらえんかね」
と、たのみにきました。
「おやすいことだ」
 えきしゃは、さっそく、おやじさんの家を見て回りました。
 牛小屋をのぞくと、牛がいません。
(なるほど、なくなったというのは、牛のことだな。牛ならたしか、野原にいたが)
 えきしゃはとりあえず、おやじさんに聞きました。
「それは、黒いものだな」
「へい、黒いもので」
「耳もついておるな」
「へい、耳もついております。でも、どうしてわかるんですか?」
 えきしゃは、いばって答えました。
「おっほん。わしにわからぬ事はない」
「へへっー、たいしたもんだ。それで、どこへいったか、わかりますか」
「むろん。・・・それは、南の方角にある。ひろい野原で、草をくっておる」
 えきしゃは、自信たっぷりにいいました。
 しかし、おやじさんは、不思議そうな顔で、
「あの、なべが、野原で、草をくうですか?」
「はあ? ・・・なべ?」
「はい、このあいだから、てつなべがひとつ、みあたらないのですが」

おしまい

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