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12月30日の小話
雪やこんご
むかしは、どこの家でも豆をまいて、年をこしたものでございます。
裏長屋に、浪人(ろうにん→お城勤めをしていない、さむらい →詳細)がおりました。
「拙者(せっしゃ→自分のこと)も、年越の豆をまかねばならぬが、こまったことに銭がない。さりとて、近所の手前、まかぬわけにもいくまい。はて、どうしたものであろう」
「うむ、そうそう。よいことがある。これも豆にはちがいない」
と、浪人は、めしがわりに食ベている、とうふのおからをざるに入れ、
「福はー、うち」
「鬼はー、そと」
パラパラパラ、パラパラパラと、おからをまきました。
「おお、降るわ降るわ。白いものが降る。これもまた、風流(ふうりゅう)なものじゃ」
と、ひとりよろこんでおりますと、縁の下から、ひょこんと、小さいこぞうが飛び出してきて、
「ゆーきや、こんこ」
「あられや、こんこ」
と、手をふり、足をあげて、おどりだしました。
「はて、ふしぎな」
よくよく見ると、それは、子どもの貧乏神でございました。
「ああ、まだまだ、貧乏は続きそうだわい」
おしまい