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3月21日の日本民話
  
  
  
  ネコに技を教えるキツネ
  福岡県の民話 → 福岡県情報
 むかしむかし、ある村にすむ男が、夜ふけに便所(べんじょ→トイレ)に行って、月の光が流れこむ小窓から何気なく外をのぞきました。
   便所の前には、あれた畑がひろがっています。
   そこへ、どこからともなく一匹のネコが現れて、あたりをうかがっていました。
  「はて。あのネコは、あんなところで何をしておるんじゃ? 仲間でも、待っておるのか?」
   すると、あれた畑のすみから、今度はキツネが出てきたのです。
   キツネはだまって、ネコのところに近づいていきました。
   けんかでもはじまるのかと見ていると、二匹は仲よくならんで、キツネはネコの前で前足をあげたり、背をのばしたり、おじぎでもするように頭を下げたりしました。
   それがおわると後ろ足で立って、チョコチョコと歩きだしました。
   ネコはそのかっこうをまねて、やはり後ろ足で立つと、キツネのあとについていきます。
   二匹はあれた畑の中をまっすぐ歩いていくと、むこうの垣根(かきね)のところまでいって、またもどってきました。
   キツネとネコは、十回以上も同じことをくりかえしていました。
   便所の小窓から見ていた男は、ふと、われにかえって用をたしました。
   するとキツネとネコはその音におどろいて、たちまち姿を消してしまいました。
   キツネはネコに、こうしていろいろな技(わざ)や踊り(おどり)を教えるといいます。
 このときはキツネはネコに、後ろ足で立って歩くことを教えていたという事です。
おしまい