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3年生の日本民話(にほんみんわ)
寿限無(じゅげむ)(長い名前の子ども)
長崎県(ながさきけん)の民話(みんわ)
むかしむかし、あるところに、なかなか子どもがうまれない夫婦(ふうふ)がいました。
でもようやく、かわいらしい男の子がうまれたのです。
お父さんとお母さんは、大喜(おおよろこ)びです。
「よし、この子にはえらいお坊(ぼう)さんに頼(たの)んで、元気で長生きできる、立派(りっぱ)な名前を付(つ)けてもらおう」
お父さんはさっそくお寺に行くと、お坊(ぼう)さんに頼(たの)みました。
「うむ、引き受(ひきう)けよう。元気で長生きできる、立派(りっぱ)な名前か。そうじゃなあ・・・」
お坊(ぼう)さんは一生懸命(いっしょうけんめい)考えて、ありがたい意味(いみ)や長生きした人の名前をくっつけて、大変(たいへん)長い名前を男の子につけてくれました。
それは、こんな名前です。
『寿限無(じゅげむ)寿限無(じゅげむ)、五劫(ごこう)のすりきれ、海砂利水魚(かいじゃりすいぎょ)の水行末(すいぎょうまつ)、雲来末(うんらいまつ)、風来末(ふうらいまつ)、食(く)う寝(ね)るところに住(す)むところ、やぶらこうじのぶらこうじ、パイポパイポ、パイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの長久命(ちょうきゅうめい)の長助(ちょうすけ)』
さて、ある日の事(こと)です。
その長い名前の子どもが、川へ落(お)ちたからたいへんです。
お母さんがあわてて、みんなを呼(よ)びにいきました。
「みんな助(たす)けておくれ!『寿限無(じゅげむ)寿限無(じゅげむ)、五劫(ごこう)のすりきれ、海砂利水魚(かいじゃりすいぎょ)の水行末(すいぎょうまつ)、雲来末(うんらいまつ)、風来末(ふうらいまつ)、食(く)う寝(ね)るところに住(す)むところ、やぶらこうじのぶらこうじ、パイポパイポ、パイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの長久命(ちょうきゅうめい)の長助(ちょうすけ)』が、川へ落(お)ちたんだよ!」
やっと名前を言い終(お)わったときには、子どもは川下の方へ流(なが)されてしまい、おぼれ死(し)んでしまいました。
ところがある日、別(べつ)の子どもが川へ落(お)ちました。
この子どもは『ちょい』というだけの、短(みじか)い名前でした。
「みんな助(たす)けておくれ! ちょいが川へ落(お)ちたんだよ!」
お母さんのさけび声を聞いて、畑(はたけ)にいる人が川に飛び込(とびこ)んで、すぐに子どもを助(たす)けてくれました。
そんなことがあってから、この地方では、どのお母さんも生まれた子どもには、できるだけ短(みじか)い名前をつけるようになったという事(こと)です。
※寿限無(じゅげむ)・・・以下(いか)略(りゃく)の名前の意味(いみ)。
「寿限無(じゅげむ)」とは、
寿命(じゅみょう)に限(かぎ)りがなく、永遠(えいえん)に死(し)なないという意味(いみ)。
「五劫(ごこう)のすりきれ」とは、
三千年に一度(いちど)、神(かみ)さまの使(つか)いが天から降(お)りてきて、地上の岩を衣(ころも)でなでるのですが、その作業(さぎょう)がすべて終(お)わるまでの時間を一劫(いちこう)といい、それが五劫(ごこう)あるので、何万年もの時間と、いう意味(いみ)です。
「海砂利水魚(かいじゃりすいぎょ)」とは、
海の砂利(じゃり)も、水にすむ魚も、とうてい取(と)りつくすことができないため、それだけ数が多いという意味(いみ)です。
「水行末(すいぎょうまつ)、雲来末(うんらいまつ)、風来末(ふうらいまつ)」とは、
水の行く末(ゆくすえ)、雲の行く末(ゆくすえ)、風の行く末(ゆくすえ)には、いずれも果(は)てがなく、広大だという意味(いみ)です。
「食う寝(ね)るところに住(す)むところ」とは、
衣食住(いしょくじゅう)を表(あら)わし、それらの全(すべ)てに不自由(ふじゆう)しないようにとの、願(ねが)いを込(こ)めた言葉(ことば)です。
「やぶらこうじのぶらこうじ」とは、
たいへん丈夫(じょうぶ)でおめでたい木の名前で、春は若葉(わかば)をしげらせ、夏は花を咲(さ)かせ、秋は実(み)を実(みの)らせ、冬は霜(しも)をふせぐと言われています。
「パイポパイポ・・・以下(いか)略(りゃく)」とは、
むかし、中国にはパイポという国があって、シューリンガンという王さまとグーリンダイという王后(おうきさき)のあいだに生まれたのが、ポンポコピーとポンポコナーという二人のお姫(ひめ)さまで、この二人が大変(たいへん)長生きをしたので、それにあやかっての言葉(ことば)です。
「久命(ちょうきゅうめい)の長助(ちょうすけ)」とは、
天長地久(てんちょうちきゅう)という言葉(ことば)があり、天地が永久(えいきゅう)にかわらないように、物事(ものごと)がいつまでもつづくと言う意味(いみ)で、長久命(ちょうきゅうめい)は、それだけ命(いのち)が長く続(つづ)くという願(ねが)いを込(こ)めて、そして最後(さいご)の長助(ちょうすけ)は、長く助(たす)かる、つまり、長生きできるという意味(いみ)です。
おしまい
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