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3年生の日本民話(にほんみんわ)

宝箱をとりもりどしたネコ

宝箱(たからばこ)をとりもりどしたネコ
北海道の民話(みんわ)

 むかしむかし、あるところに、まずしい男が住(す)んでいました。
 毎日毎日、山へ出かけては、シカやクマをとってくらしていますが、もとは村一番の長者(ちょうじゃ)で、だれからも尊敬(そんけい)されていました。
 ところが、長者(ちょうじゃ)の家に代(だい)だい伝(つた)えられていた、神(かみ)さまの宝箱(たからばこ)を海の魔神(まじん)にぬすまれてからというもの、男はすっかり落(お)ちぶれてしまい、今ではそまつな小屋(こや)に、一匹(1ぴき)のネコとイヌがいるだけなのです。
 猟(りょう)に出かけるといっても、まったく獲物(えもの)のない日があり、そんな時はネコやイヌにさえ、エサをあげることができません。
 そしてここ何日も獲物(えもの)が見つからず、ウサギ一匹(1ぴき)手にすることができないので、男は山へ行くのをあきらめて、朝から晩(ばん)まで寝(ね)てばかりいました。
 ネコもイヌもこまってしまい、男のまくら元へいって、相談(そうだん)しました。
「なあ、このままでは、あなたもわしらもうえ死(じ)にしてしまうよ。何とか食べ物(たべもの)を手に入れる方法(ほうほう)はないのですか?」
 すると男は、
「いや、もうわしはだめだ。すまないがこんな家は出て、お前たちだけで生きてくれ」
と、言ったのです。
 しかし、今までかわいがってもらった恩(おん)をわすれて、男を見捨(みす)てることはできません。
 ネコが男に、はげますように言いました。
「そんな気の弱いことでどうするの。さあ、一緒(いっしょ)に山へ行きましょう」
「・・・いいや、神(かみ)さまの宝箱(たからばこ)がなくてはどうにもならない。いくらがんばっても、むだな事(こと)だ」
 男は宝箱(たからばこ)を海の魔神(まじん)に盗(ぬす)まれてから、ひどい暮(く)らしになったことを正直にうちあけました。
 するとネコが、
「なんだ、そうだったの。では、あたいらが宝箱(たからばこ)をとりもどしてあげるよ」
 そしてイヌも、
「そうさ。わしらがもどってくるまで、どんなことがあっても待(ま)っていておくれよ」
と、言ったのです。
 二匹(2ひき)はすぐに家を出て、海の魔神(まじん)の住(す)む島(しま)へと向(む)かいました。
 島(しま)までは遠くて、二匹(2ひき)は海の中をかわるがわる相手(あいて)を背中(せなか)にのせて泳(およ)ぎ、ようやく島(しま)へ着(つ)いた時には、寒(さむ)さと空腹(くうふく)で一歩も動(うご)けない状態(じょうたい)でした。
 それでも魚を食べて、ようやく元気になった二匹(2ひき)が立ちあがろうとした時、おびただしい数のネズミが山の方から海辺(うみべ)へと押(お)しよせてきたのです。
 ネコは、そのネズミたちにさけびました。
「魔神(まじん)のいるほら穴(あな)へつれていきなさい! さもなくば、このツメで一匹(1ぴき)(のこ)らずひっとらえて、やつざきにしてやるよ!」
 イヌも負(ふ)けじと、大声でさけびました。
「いうことを聞かないと、このキバで一匹(1ぴき)(のこ)らず、かみくだいてやるぞ!」
 その声にネズミたちは驚(おどろ)き、急(いそ)いで向(む)きをかえると、二匹(2ひき)を案内(あんない)して山へと登(のぼ)っていったのです。
 さて、山の中腹(ちゅうふく)に大きな岩屋(いわや→岩のどうくつ)があり、入口には石の戸が閉(し)まっていました。
 ここが魔神(まじん)のいるほら穴(あな)のようですが、どうやら魔神(まじん)は留守(るす)のようです。
「よし、今のうちよ。お前たち、早くこの石の戸に穴(あな)を開(あ)けなさい!」
 ネコが手をふりあげて命令(めいれい)すると、ネズミたちは石の戸をかじり、石の戸にポッカリと穴(あな)を開(あ)けました。
「それっ!」
 二匹(2ひき)が岩屋(いわや)にとびこむと、男の言ったとおりの宝箱(たからばこ)がありました。
 ネコがその箱(はこ)をかかえて、イヌの背中(せなか)にのせました。
 二匹(2ひき)が岩屋(いわや)から出てきた時、ネズミたちの姿(すがた)がありません。
「もしかすると、魔神(まじん)のところへ知らせに行ったのかもしれない。はやくもどろう」
 二匹(2ひき)は、海辺(うみべ)に急(いそ)ぎました。
 ネコがふり返(かえ)ると、ネズミを引きつれた魔神(まじん)が、ものすごい勢(いきお)いで山をくだってくるのが見えます。
 二匹(2ひき)はあわてて海へ飛び込(とびこ)み、箱(はこ)を押(お)さえながら必死(ひっし)に泳(およ)ぎました。
 ようやく村の海辺(うみべ)へたどりつくと、今度(こんど)はネコが背中(せなか)に箱(はこ)をのせて、男の待(ま)つ家へともどっていきました。
 二匹(2ひき)が宝箱(たからばこ)を取り返(とりかえ)してきたのを知った男は、ビックリです。
「おおっ、まさか本当にとり返えしてくるなんて。ありがとう。もう二度(にど)と、盗(ぬす)まれるようなことはしないぞ」
 男が神(かみ)さまの宝箱(たからばこ)を開(あ)けると、中から金と銀(ぎん)の玉が出てきました。
 不思議(ふしぎ)なことに、その玉を米びつに入れると、空っぽだった米びつがたちまち米であふれて、空の袋(ふくろ)に入れると、袋(ふくろ)は砂金(さきん)でいっぱいになりました。
 宝箱(たからばこ)のおかげで、男はまた長者(ちょうじゃ)となり、りっぱな屋敷(やしき)をかまえました。
 男が長者(ちょうじゃ)になったのを知って、以前(いぜん)に長者(ちょうじゃ)の屋敷(やしき)で働(はたら)いていた者(もの)たちも、次々(つぎつぎ)ともどってきました。
 長者(ちょうじゃ)はネコとイヌのためにりっぱな部屋(へや)をつくり、いつまでも大切にかわいがりました。
 そして魔神(まじん)がふたたび宝箱(たからばこ)を盗(ぬす)まないように、ネコとイヌは死(し)ぬまで、神(かみ)さまの宝箱(たからばこ)を守(まも)ったという事(こと)です。

おしまい

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