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6月17日の日本民話
  
  
  
まめになれないとうふ
愛媛県の民話 → 愛媛県情報
 むかしむかし、おとうふが病気になりました。
   それを聞いたダイコンが、お見まいに出かけることにしました。
   でも、一人で行くのははずかしいので、ゴボウをさそいに行きました。
  「おとうふさんが病気だそうです。二人でお見まいに行きませんか?」
   すると、ゴボウが言いました。
  「わたしはぜんぜん風呂に入らず、体中があかだらけで汚いので、色の白いダイコンさんと一緒に行くことはできません。おとうふさんには、どうかよろしくお伝えください」
   そこでダイコンは、ニンジンのところへ行きました。
  「おとうふさんが病気だそうです。二人でお見まいに行きませんか?」
   すると、赤い顔のニンジンが、いよいよ顔を赤くして言いました。
  「じつは今、お酒を飲んだばかりです。こんな赤い顔をしてお見まいには行けません。だれかほかの人をさそってください。おとうふさんには、よろしく」
   ダイコンはその足で、サトイモのところへ行きました。
  「おとうふさんが病気だそうです。二人でお見まいに行きませんか?」
   すると、小イモたちの世話をしていたサトイモが言いました。
  「それはお気の毒。一緒に行きたいのですが、このとおりたくさんの子どもがいますので、出かけることは出来ません」
  「それじゃ、子どもさんも一緒にどうですか? にぎやかな方が、おとうふさんもよろこぶと思いますよ」
  「とんでもない。子どもたちがさわいだら、おとうふさんの病気にさわります。すみませんが、よろしくお伝えください」
  「それじゃ、しかたがありません。一人で出かけることにしましょう」
   そこでダイコンは、一人でとうふのところへお見まいに行きました。
  「おとうふさん、具合はいかがですか? ゴボウさんも、ニンジンさんも、サトイモさんも心配していました。早く元気になってくださいね」
   すると、とうふが言いました。
  「ありがとうございます。おかげさまでだいぶよくなりました。でも、もう元の体にはもどれません」
  「どうしてですか? そんな気の弱いことを言ってないで、早くまめになってくださいね」
   ダイコンがはげましましたが、とうふはこまった顔で言いました。
  「わたしはとうふですから、まめになることはできません」
  (ああ、なるほど、それはお気の毒に)
   ダイコンは、心の中で言いました。
   『まめになる』というのは、『元気になる』という意味です。
 まめはとうふになれても、とうふはまめにはなれないのです。
おしまい