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7月11日の日本民話
カッパと寿円禅寺(じゅえんぜんじ)
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むかしむかし、ひどいひでりにおそわれて、作物は枯れ果て、田はひびわれてしまいました。
こまったのは、人間だけではありません。
竜が淵(りゅうがふち)に住んでいたカッパも、頭の皿をぬらす水にもことかくありさまで、魚もすっかり死にたえてしまいました。
おなかがすいてたえきれなくなったカッパは、悪いとは思いつつ、近くの自住禅寺(じしゅうせんじ)の放生池(ほうしょういけ)のコイを一匹たべてしまいました。
このころ、鐘乳洞(しょうにゅうどう)に自住禅寺の寿円禅師(じゅえんぜんじ)さまが入って、百姓(ひゃくしょう)たちの苦しみを救うために雨乞い(あまごい)のお祈りをはじめていました。
これを見たカッパは
「わしが池のコイを食べたので、のろい殺そうというのじゃな」
と、感ちがいして、あれこれとお祈りのじゃまを始めました。
しかし禅師(ぜんじ)は気にもとめず、一心にお祈りをつづけました。
カッパはその姿(すがた)に心をうたれて、いつしか弟子となり、禅師のお手伝いをするようになりました。
いよいよ満願(まんがん)の日は、朝から雷をともなう大雨でした。
「御仏(みほとけ)は、わたしの願いをお聞きくだされたか」
禅師はよろめく足で鍾乳洞から出て行きました。
カッパも、
「これで、わしの罪(つみ)もゆるされよう」
と、禅師に続いて出てみると、禅師は竜が淵の一枚岩(いちまいいわ)の上に立っていました。
(あぶない!)
と、思った時はすでに遅く、禅師は淵に身を投げてしまいました。
願いをききとどけられた禅師が、御仏(みほとけ)のもとに命を投げ出したとは知らないカッパは、禅師をお助けしようと淵に飛び込みましたが、おりからの濁流(だくりゅう)にのまれてしまいました。
自住禅寺近くの川の中で、禅師のなきがらを抱いたカッパが発見されたときには、すでにカッパは力つきて、川下に流されてしまいました。
村人は禅師の遺体(いたい)を荼毘(たび)にふすと共に、このけなげなカッパを『禅師河童(ぜんじかっぱ)』とたたえて、手厚(てあつ)くとむらったという事です。
おしまい