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        3年生の日本民話(にほんみんわ) 
          
          
         
カエルのお坊(ぼう)さん 
岡山県(おかやまけん)の民話(みんわ) 
      
       
      
       むかしむかし、ある池の中に、カエルのお坊(ぼう)さんがいました。 
   毎日、ハスの葉(は)っぱの上にすわって、 
  「ナムゲロゲロダブツ」 
  と、お経(きょう)をあげていました。 
   とてもすごいお坊(ぼう)さんで、その日に咲(さ)くハスの花の数をかぞえて、いくつお葬式(そうしき)があるかを言いあてるのです。 
   さて、ある日の朝の事(こと)、池の上にハスの花が五つ咲(さ)きました。 
  (おや、今日は五つもお葬式(そうしき)があって、いそがしくなるぞ) 
  と、思っていたら、モグラのおかみさんがやってきて、 
  「カエルのお坊(ぼう)さま。主人(しゅじん)がなくなりました」 
  と、言いました。 
  「それはお気の毒(きのどく)に。でも、あんたのご主人(しゅじん)はよく働(はたら)いたから、りっぱな仏(ほとけ)さまになれるだろう」 
  と、ていねいに、お経(きょう)をあげてやりました。 
   するとそこへ、セミの息子(むすこ)がやってきて、 
  「カエルのお坊(ぼう)さま。おやじがなくなりました。無事(ぶじ)に仏(ほとけ)さまになれるよう、お経(きょう)をあげてやってください」 
  と、言いました。 
  「残念(ざんねん)じゃが、そいつは無理(むり)じゃ。夏の間、仕事(しごと)もせずに歌ばかりうたっていて、りっぱな仏(ほとけ)さまになれるもんか。まあそれでも、お経(きょう)だけはあげてやろう」 
   カエルのお坊(ぼう)さんは、こわい顔で、 
  「ナムゲロゲロダブツ!」 
  と、お経(きょう)をあげました。 
   セミの息子(むすこ)がガッカリして頭をさげていると、コオロギの家から使(つか)いがやってきました。 
  「カエルのお坊(ぼう)さま。うちのだんなが、なくなりました」 
  「なんと、コオロギのだんながなくなったと。これからはいよいよ、お前さんたちの季節(きせつ)がくるというのに、なんともおしいのう。よしよし、りっぱな仏(ほとけ)さまになれるよう、お経(きょう)をあげてやろう」 
   カエルのお坊(ぼう)さんがいっしょうけんめいお経(きょう)をあげていると、目の前に緋鯉(ひごい→金・銀(ぎん)・赤などの色の付(つ)いたコイの総称(そうしょう))が顔を出して言いました。 
  「カエルのお坊(ぼう)さま。さっき、夫(おっと)が死(し)にました。どうか、りっぱな仏(ほとけ)さまになれるように、お経(きょう)をあげてやってください」 
  「だめだ、だめだ。夫婦(ふうふ)して毎日遊(あそ)びくらしていたくせに。・・・まあ、お経(きょう)ぐらいはあげてやるが」 
   お経(きょう)がすむと、カエルのお坊(ぼう)さんが、ホッとして言いました。 
  「やれやれ、これで四つのお葬式(そうしき)が終(お)わったぞ。あと一つはどうなっている? 早く言ってこないかな」 
   そのとたん、池のそばで遊(あそ)んでいた人間の子どもが、石を投(な)げました。 
   石はカエルのお坊(ぼう)さんの頭に当たり、カエルのお坊(ぼう)さんはひっくりかえって、白いおなかを出して言いました。 
  「こいつはたまげた。五つ目のお葬式(そうしき)がわしとは、気がつかなかった」 
   そしてそのまま、死(し)んでしまいました。 
      おしまい         
         
         
        
       
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