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1ねんせいのにほんみんわ
きしぼじんさま
さいたまけん の みんわ
むかしむかし、 さやま(→さいたまけんなんぶ)に、 あるむらが ありました。
あるひのこと、 こどもたちが あそんでいると、 とつぜん おおきなつむじかぜが ふきおこったのです。
「こどもは どこだ! こどもは どこだ!」
むらに こどもをさらう、 おにおんなが あらわれたのです。
「おにおんなだ!」
かぜの なかから あらわれた おにおんなは、こどもを ひとり さらっていきました。
それからは ゆうがたに なると まいにちのように おにおんなが やまから やってきて、 こどもを さらっていくのです。
「こどもは どこだ! かくれても、 においで わかるぞ! くんくん。 そこだなー!」
こどもを どこにかくしても、 おにおんなは はながいいので、 においで みつけられてしまいます。
こどもたちの こえで にぎわっていた むらは、 ひっそりと さびしい むらに なってしまいました。
むらの ひとたちは、 なにか いいほうほうは ないかと そうだんして、 おしゃかさまに おねがいすることに しました。
つぎのひ、 むらびとたちは、 おしゃかさまの いるという やまへ のぼっていきました。
やがて くもの あいだから すがたを あらわした おしゃかさまに、 むらびとたちは てを あわせて おねがいしました。
「むらに おにおんなが やってきて、 こどもを さらっていくのです。 どうか おたすけくださいませ」
すると、 おしゃかさまは いいました。
「わかりました。 わたしが なんとかしますから、 どうぞ あんしんなさい」
おしゃかさまが さっそく おにおんなのところへ いってみると、 おにおんなに さらわれてきた こどもたちが あなぐらのなかで ないていました。
この ひどい おにおんなですが、 このおにおんなにも じぶんのこどもが いるのです。
それも ひとりや ふたりではなく、 なんと 1まんにんもです。
そのこどもたちを、 おにおんなは、
「おお、 わたしのこは なんて かわいいんじゃろう」
と、 だきしめるのです。
それを しった おしゃかさまは、 おにおんなが でかけたすきに おにおんなの こどもを ひとり つれてかえったのです。
さあ、 じぶんの こどもが ひとりたりないことに きがついた おにおんなは、
「わたしの こどもが ひとり いなくなった! どこへ いったの?」
と、 くるったように わがこを さがしまわります。
そこへ、 おしゃかさまが すがたを あらわしました。
「ああ、 おしゃかさま。 ちょうど よいところに。 じつは わたしの かわいいこどもが、 ひとり いないのです」
すると おしゃかさまは、 しずかに いいました。
「それは かわいそうに。 ・・・ところで おにおんなよ。 おまえは 1まんにんも こどもがいるが、 ひとりでも いなくなると そんなに かなしいのか?」
「はい、 それは もちろんで ございます」
「そうであろう。 おやとは そういうものだ。 しかし それなら、 おまえに こどもを さらわれた にんげんたちのきもちも、 わかるのでは ないか?」
「・・・あっ!」
「そうだ。 こどもが いなくなった おまえとおなじに、 にんげんたちも こどもがいなくなって かなしんでいるのだ。 すぐに こどもたちを かえしてやりなさい」
おしゃかさまは そういうと、 おにおんなの こどもを かえしてやりました。
「おゆるしください! わたしが わるう ございました!」
すっかり こころを いれかえた おにおんなは、 こどもたちを むらへ かえしたのです。
それから おにおんなは おしゃかさまの でし と なり、 きしぼじんと なって、 あんざんと こどもを びょうきからまもる かみさまに なったということです。
おしまい
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