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10月13日の日本民話
  
  
  
  助けられた赤ウシ
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 むかしむかし、北海道の函館善光寺(はこだてぜんこうじ)というお寺ができるときのことです。
   新しいお寺が完成する半月ほど前の朝、ご本尊(ほんぞん)を安置(あんち)していたかりの本堂(ほんどう)に、大きなウシがものすごい勢いでとびこんできました。
   飛び込んできたのはメスの赤ウシで、人間に食べられるための肉にされるために、つれていかれる途中でしたが、お寺の鐘(かね)の音をきくと、いきなりたづなをふりきって走りだし、お堂の中に飛び込んだというのです。
   つれてきたウシ飼いたちがたづなをひいたり、からだをたたいたりしても、ウシはビクとも動きません。
   こまったウシ飼いたちは仲間を呼んで、ようやくお堂からウシをひきだしました。
   そのとき、お寺の和尚(おしょう)さんが、
  「この赤ウシはご本尊の如来(にょらい)さまと縁(えん)があって、このお堂に逃げこんできたのだろう。殺されたらそのツノをもらいうけて供養(くよう)してやろうと思うのだが」
  と、いって両手をあわせて、大きな赤ウシを見送りました。
   ところがその後、和尚さんはその赤ウシが肉にされずに、まだ生きていることを聞いたのです。
   和尚さんは、すぐに出かけていって、
  「殺されずに命を長らえているのは、やはり縁があるのじゃ。お寺で飼ってやれば信者も喜ぶだろう」
  と、その赤ウシをもらいうけてきました。
   やがて、お寺が完成しました。
   和尚さんは赤ウシの小屋をたてて、その前に賽銭箱(さいせんばこ)を置きました。
   そして赤ウシの話を書いた紙を、町でくばり、
  「このウシは、長野の善光寺(ぜんこうじ)の如来さまの生まれかわりじゃ」
  と、いって、お寺の信者をふやしていったのです。
   その後、和尚さんは信者たちと赤ウシをひいて北海道から海をわたり、長野県の善光寺参りをしました。
   赤ウシは善光寺の本堂の前までいくと、前足をたたんですわり、うやうやしく頭を下げたので、それを見ていた人たちはビックリしたということです。
   赤ウシは函館へ帰ってきてからも信者たちに愛されていましたが、やがて病気になって死んでしまいました。
   するとお寺も、だんだんとさびれていったという事です
おしまい