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1ねんせいのにほんみんわ
みずグモの いと
しずおかけん の みんわ
むかしむかし、 あるやまざとに、 つりの めいじんが いました。
この おとこの てにかかると、 つるのが むずかしいと いわれる イワナでも ヤマメでも、 なんなく つれてしまいます。
あるひのこと、 おとこが やまおくの かわに つりいとを ながしていると、 1ぴきの ちいさなクモが かわから あがってきました。
そして おとこの はいている わらじに いとを かけると、 ふたたび かわに もどって いきました。
そのクモが また みずから あがってきたかと おもうと、 おとこの わらじに いとを かけます。
こんなことが なん10かいも くりかえされるうちに、 ほそかったいとも しだいに ふとくなって、 ちいさな ろうそくのしん くらいに なってきました。
おとこは、
「おかしなことをする クモも いるもんだ」
と、 おもっていましたが、 いとが ふとくなるにつれて、 なんだか うすきみわるく なってきました。
そこで クモが みずに もどったすきに、 クモの かけたいとを わらじから はずして、 すぐわきの おおきなきのねに かけておきました。
すると、 どうでしょう。
やがて かわのなかの なにかが、 そのいとを グイグイ ひっぱり はじめたのです。
「たかが クモのいとでは ないか。 すぐに、 プツンと きれてしまうに ちがいない」
ところが きのねから ミシミシッと おとが したかと おもうと、 ズッ、 ズズズッーと、 うごきだしていくでは ありませんか。
とても、 あのちいさなクモの ちからとは おもえません。
しかし いとは ますます つよくひかれて、 さいごには たいぼくを ねこそぎ たおしてしまうと、 とうとう かわに ひきこんで しまったのです。
「・・・・・・」
おとこは おそろしくて、 こえも でません。
たかが クモのいとと バカにして、 わらじに かけられたいとを そのままに していたら、 いまごろは じぶんが かわに ひきこまれていたでしょう。
そうおもった おとこが かわを のぞこうとすると、 さきほどまでの ちいさなクモが、 にんげんよりも おおきなすがたで かわから あらわれました。
「ヒェー! ばけものだー!」
おそろしい ばけものグモは、 おとこに シューッと しろいいとを ふきかけて きました。
おとこは あやうく からだを かわして しろいいとから のがれると、 あとは いちもくさんに むらへ にげかえったと いうことです。
おしまい
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