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2月29日の世界の昔話

ものをいう鍋

ものをいうナベ
デンマークの昔話 → 国情報

 むかしむかし、とても貧乏なお百姓夫婦がいました。
 とうとう食べるものがなくなったので、たいせつなメスウシを売ることにしました。
 お百姓がメスウシを連れて町へいくと、ある町角で一人の男に会いました。
「いいウシだね。このナベと取りかえませんか?」
「と、とんでもない。こんな汚いナベとなんて! わしはお金が欲しいのです」
 そのとき、突然ナベがいいました。
「わたしを取っておけ。絶対いいことがある」
 そこでお百姓は、メスウシとナベを取りかえて家に帰りました。
 おかみさんは、もうカンカンです。
 すると、ナベが歌うようにしゃベりだしました。
「わたしをきれいにしておくれ。火にかけておくれ」
「おや? ものいうナベかい。こりゃ役にたちそうだ」
 きげんをなおしたおかみさんは、すぐにナベをピカピカにして火にかけました。
 するとナベは、ピョンと火から飛びおりて、
「飛んでく、はねていく、金持ちさんちへ」
と、いって、ピョンピョン家を出て行きました。
 ちょうど金持ちの家では、奥さんがプリンをつくろうとしていました。
 そこへナベが飛び込んできたので、奥さんは、
「これは都合がいいわ。おいしいプリンができそう」
と、材料をナベに入れて、火の上にかけました。
 するとナベは、ピョンと火から飛びおりて、
「飛んでく、はねていく、お百姓の家へ」
と、ピョンピョン帰って行きました。
 ナベのおかげで、お百姓さんはおいしいプリンをおなかいっぱい食ベることができました。
 さてつぎの朝、またナベは、
「飛んでく、はねていく、金持ちさんちへ」
と、家を飛び出し、また金持ちの家へやってきました。
 ちょうど納屋(なや)では、お手伝いの人たちがムギをたたいていましたが、そこへナベがやってきたので、
「こりゃ、ムギを入れるのにもってこいだ」
と、一袋のムギを入れました。
 ところがナベは、なかなかいっぱいにはなりません。
 とうとう納屋の中のムギが全部はいってしまいました。
 するとナベは、
「飛んでく、はねていく、お百姓の家へ」
と、ピョンピョン帰っていきました。
 お百姓夫婦は、ナベの運んできたムギを見て、
「ありがたい。これだけあれば何年も食ベられるぞ」
と、大喜びです。
 さて三日めの朝、またナベは、
「飛んでく、はねていく、金持ちさんちへ」
と、いって飛び出しました。
 金持ちの家では、主人が金貨をかぞえていました。
 そこへナベが飛び込んできたので、
「ほう、わしの金貨をしまっておくのにピッタリのナベだ」
 主人はさっそくテ一ブルの上の金貨をナベに入れ、戸だなにしまおうとすると、ナベはするりとぬけ出し、
「飛んでく、はねていく、お百姓の家へ」
と、ピョンピョンはねて帰っていきました。
 お百姓夫婦は金貨を見てビックリ。
「これで、楽に暮らせるね」
 お百姓夫婦はナベをていねいにみがいて、たなにしまいました。
 ところがつぎの日、またナベは金持ちの家へいきました。
 すると主人は、
「この魔法のナベめ、プリンとムギと、わしの大事な金貨を一つ残らず返せ!」
と、ナベに飛びつきました。
 するとどうでしょう。
 主人のからだはナベにピッタリくっついてしまったのです。
 いくらあばれても離れません。
 ナベはいいました。
「飛んでく、はねていく!」
「ええーい。どこへでも飛んでいけ!」
 そこでナベは、金持ちの主人をくっつけたまま、遠くへ遠くへ飛んでいってしまい、二度と帰っては来ませんでした。

おしまい

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