福娘童話集 > きょうの世界昔話 > 4月の世界昔話 > パイプをもらったクジラ
4月2日の世界の昔話
パイプをもらったクジラ
アメリカの昔話 → 国情報
むかしむかし、アメリカのインディアン(→詳細)に、タバコがすきで歌のじょうずな、クロスカップという男がいました。
ある日クロスカップは、用があって海をわたることになりました。
でもクロスカップは、あまり泳ぎがじょうずではありません。
そこで、
♪ほうい ほうい。
♪海をわたりたいが わたしはあまり泳げない
♪お礼はするから だれかわたしをのせてくれ
♪ほうい ほうい
海岸にたって歌うと、クジラがやってきました。
「海のむこうまで、のせていってくれないか?」
「おやすいご用だ」
クロスカップをのせたクジラは、ぜんそく力でおよぎ出しました。
「しっかりと、つかまっていてくださいよ」
「だいじょうぶ。おまえの背中はひろいから」
クロスカップはクジラの背中の上で、きざみタバコをパイプ(→詳細)につめると、プカリ、プカリと、ふかしました。
やがてむこうに、めざす島が見えはじめた時、きゅうにクジラのスピードがおちました。
「おや? どうしたんだい?」
「このまますすめば、おなかが海のそこにつかえてしまいます」
心配そうに、クジラがいいました。
「なあに、だいじょうぶさ」
クロスカップがわらっていうので、クジラはまたすすみました。
でも、やっと島についた時、クジラはやっぱり、あさせにのりあげてしまいました。
「ほら、あなたのせいですよ。もう、海にもどれなくなってしまった。どうしよう・・・」
クジラは、シクシクとなき出してしまいました。
「心配するな、わたしが海に返してやるから」
と、いうと、クロスカップは背中からすベりおりて、クジラの頭をかかえると、すごい力で、
「えい、えいっ!」
と、おしたのです。
すると、
「ずずっ、ずずずっ」
クジラはすべり出して、海にプッカリとうかびました。
「さて、のせてくれたお礼に何をあげよう?」
クロスカップが聞くと、クジラはちょっと考えていいました。
「あなたの持っている、パイプとタバコをください」
「よかろう」
クジラはパイプをくわえて、よろこんで帰っていきました。
みなさんは、クジラがしおをふくと思っているでしょう。
本当は、クロスカップにもらったパイプをふかしているのです。
おしまい