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5月19日の世界の昔話
ネコがごはんのあとで顔を洗うわけ
リトアニアの昔話 → 国情報
むかしからネコは、ごはんをたべたあとで顔や手をなめて洗います。
ふつうなら、ごはんをたべる前に洗うのでしょうが、なぜ、そうしないのでしょうか?
それには、こんなわけがあるのです。
むかしむかし、一羽のスズメが、お百姓のうら庭で、ムギつぶをつついていました。
草むらをいったりきたりして、ひとつぶずつたべています。
それを、お百姓のかいネコが見つけました。
これはいいごちそうとばかりに、ネコはスズメをつかまえてたべようとしました。
すると、
「まってください! まってください!」
スズメは、羽をバタバタさせてさけびました。
「ネコさん、わたしをたべるつもりですか?」
「きまってるさ。それがどうした?」
ネコはそういうと、スズメの頭をかじろうとしました。
「ネコさん。あなたは、はずかしくないですか?」
「なにがだ?」
「だって、顔をあらうのをわすれていますよ。あなたのご主人たちは、みんな、ごはんをたべるまえに、顔と手をあらうでしょう。そのくらいのこと、あなただって知ってるじゃありませんか」
「うむ。なるほど、たしかにそうだ」
ネコは顔をあらおうとして、スズメをおさえていた手をはなしました。
そのとたん、スズメはつばさをひろげて、さっと、空へとんでいってしまいました。
「ああ! しまった!」
ネコは、からだがふるえるほどくやしがりました。
「よし、もうだまされないぞ。人間は人間のすきなようにやるさ。おれは、はじめにごはんをたべて、あとで顔をあらうんだ」
それからはネコは、ごはんのあとで顔や手をあらうことにしたのです。
おしまい