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7月16日の世界の昔話
お茶のポット
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「こんにちわ。私はお茶のポットです。私は陶器(とうき)でできていますのよ。注ぎ口は細くて長くてすてきでしょう。いつでしたか、どなたかがバレリーナのうでのようと、ほめてくださいましたわ。とってのはばの広さはどう思いまして? 何ともうしましても、陶器は私のように上品(じょうひん)で、しかもおしゃれでなくては。なにしろ私は、一流(いちりゅう)の職人(しょくにん)さんが、それはそれはていねいに作ってくださいましたのよ」
お屋敷の台所で、お茶のポットはいつもじまんしていました。
でも、聞かされるクリーム入れやさとう入れは、ほめるよりも、もっと別のことをよく言いました。
「ところで、ポットさんのフタはどうされました?」
そのことを言われると、ポットはだまってしまいます。
フタは前に一度こわされて、つぎはぎにされ、つぎ目があるのです。
「そうね。誰でも悪いところに目がいくものよね。でも何と言われても、私はテーブルの上の女王よ。だって、のどがかわいている人間を助けてあげることができるんですもの。この注ぎ口が女王のしょうこよ。クリーム入れもさとう入れも、言ってみればけらいじゃないの」
そんなある日のこと。
食事のときに誰かがポットを持ちあげたひょうしに、床に落としてしまったのです。
ポットは床で音をたてて、コナゴナになってしまいました。
「それから私は、まずしい家の人にもらわれて行きましたの。そこで土をいれられ、球根(きゅうこん)をうめられましたわ。私はうれしく思いました。なぜって球根は、私のからだの中でグングンと元気に育ち、芽(め)を出したのです。そして、朝をむかえるたびに大きくなり、ある朝見事な花がさきましたの。花は娘のようなもの。まあ、お礼はもうしてくれませんでしたが、私は幸福でしたわ。家の人たちは花を見て、その美しさをほめてくれました。誰かを生かすために自分の命を使うって、うれしいことです。そのとき初めてそう思いました。でも、家の人たちは『こんなきれいな花は、もっとすてきなうえ木ばちにうえたほうがいいね』と、花をつれて行き、私を庭のすみにほうり投げましたの。でも、私をかわいそうなどと思わないでくださいね。ええ、私は思い出がたくさんあるのですから。これだけは、だれにもこわしたり、ほうり投げたりできませんのよ」
おしまい