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8月9日の世界の昔話

大男のとびじいさん

大男のとびじいさん
スウェーデンの昔話 → 国情報

 むかしむかしのお話です。
 ある小さな村に、二人のお百姓(ひゃくしょう)さんが、となりどうしですんでいました。
 一人はお金持ちでしたが、ずるい性格で、もう一人はまずしいくらしをしていましたが、気だてのよいお百姓さんでした。
 二人のお百姓さんは、共同(きょうどう)の草かり場をもち、毎日そこではたらいています。
 お金持ちのお百姓さんは、この草かり場を自分だけのものにしたいと、いつも考えていました。
 ある日のこと、お金持ちのお百姓さんは、よい考えがうかんだので、となりにいきました。
「一度、あんたと草かりの競争をやってみたいんだよ。それで勝ったほうが、共同の草かり場をぜんぶ使っていいというのはどうかね?」
 お金持ちのお百姓さんが、こわい顔でいうので、気だてのよいお百姓さんは、しぶしぶ、その競争をやってもいいといいました。
 さて、約束の日がきました。
 お金持ちのお百姓さんは、お金をいっぱい出して、おおぜいの人をやといました。
 それにたいして、まずしいお百姓さんは自分一人だけです。
 これでは、やる前から勝負は見えています。
「ああ、あの草かり場も、これでとなりの金持ちにとられてしまうのだ。これから、どうやってくらしていったらよいものやら」
 まずしいお百姓さんは、ションボリしていいました。
 するととつぜん、一人の大男があらわれました。
「おまえさんは、何をそんなに、なやんでいるのかね?」
 まずしいお百姓さんは、わけをはなしました。
 大男は、その話を聞くと、
「なんだね、そんなことでクヨクヨして。よし、わしが力をかそう。草かりがはじまったら、おまえは『大男のとびじいさん』と、三回となえるがいい。わかったね」
 大男はそういうと、あっというまに消えてしまいました。
 いよいよ、草かり競争のはじまる時間になりました。
 お金持ちのお百姓さんは、三十人の人たちをつれてやってきました。
 まずしいお百姓さんは、たった一人ぼっちで、お金持ちのつれてきた人数に、ぼうぜんとたちつくしてしまいました。
 そのあいだに三十人の人たちは、せっせとカマで草をかりはじめました。
 まずしいお百姓さんは、この時ふと、大男のことを思い出しました。
(そうだ! 『大男のとびじいさん』って、いうんだっけ)
 まずしいお百姓さんは、大声で三回さけびました。
「大男のとびじいさん!」
「大男のとびじいさん!」
「大男のとびじいさん!」
 まわりにいた人たちは、あいつは頭がおかしくなってしまったんだと、顔を見あわせてわらいました。
 まずしいお百姓さんは、もう一度大きな声で、三回さけびました。
「大男のとびじいさん!」
「大男のとびじいさん!」
「大男のとびじいさん!」
 まずしいお百姓さんは、もう夢中(むちゅう)でさけびつづけました。
 たちまち、見あげるような大男が、手に大きなカマをもって、草かり場のまん中にあらわれたのです。
 お金持ちのお百姓さんと草かりの人たちは、ビックリして腰をぬかしました。
 大男はあっというまに、大きなカマで草をかりとってしまいました。
 お金持ちのお百姓さんは、負けたのがくやしくて、大男をけとばしました。
 ところが、お金持ちのお百姓さんの足は、大男の足にペッタリとくっついてしまいました。
「なにをする。この大男め!」
 お金持ちのお百姓さんは、もういっぽうの足で、大男をまた、けとばしました。
 すると、もういっぽうの足もペッタリとくっついてしまいました。
 大男はお金持ちのお百姓さんをくっつけたまま、どこかにとんでいって、二度とすがたをあらわしませんでした。
 まずしいお百姓さんは、草かり場がぜんぶ自分のものになったので、たいそうよろこびました。

おしまい

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