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3年生の世界昔話(せかいむかしばなし)
クマの子ハンス
シュトルムの童話(どうわ) → シュトルムの童話(どうわ)のせつめい
むかしむかし、ハンスという男の子が、炭焼(すみや)きの仕事(しごと)をしている、お父さんとお母さんとくらしていました。
ハンスはとても力持(ちからも)ちで、小さな木なら、草を引きぬくように、ひっこぬいてしまいます。
子イヌをだきしめたら、あまりの力に、グッタリさせてしまうほどでした。
ある日、ハンスが森で一人であそんでいると、子クマを人間に殺(ころ)されたクマが、しかえしをしようと飛(と)びかかりました。
ふつうの子どもなら、ひとはたきで死(し)んでしまうのに、ハンスはクマにはたかれたって、へいきです。
そのうちに、クマは子グマをだくようにハンスをだきしめ、森のおくのほら穴(あな)に、つれて行きました
そして、やわらかい干(ほ)し草(くさ)の上に、そっとおろしました。
「わあ、気持(きも)ちいいなあ」
ハンスはニッコリ笑(わら)うと、そのままねむってしまいました。
それからしばらくして、あまいかおりで目をさましてビックリ。
つみたてのイチゴが、山のようにつんであります。
クマは、
「さあ、お食べなさい」
と、いうように首をふりました。
ハンスは大喜 おおよろこ)びで、おいしいイチゴを食べました。
そのあと、クマのあたたかいおっぱいを、ゴクゴクとのみました。
こうしてハンスは、クマと一緒(いっしょ)に、くらすようになりました。
クマはハンスのために、毎日食べ物(たべもの)をとって来て、おっぱいをたっぷり飲(の)ませてくれました。
ハンスはグングン大きくなり、やがてりっぱな若者(わかもの)になりました。
でも、クマはハンスが外に出られないように、穴(あな)の入り口を岩でふたをしていました。
ところが、ある日のこと。
いつものようにクマが岩のふたをして出かけたあと、ハンスは岩を押(お)してみました。
ぐっ、ぐぐぐーーー。
なんと、岩が動(うご)いたのです。
クマのおっぱいを飲(の)んでそだったハンスは、クマと同じくらいの力持(ちからも)ちになったのです。
岩は少しずつ動(うご)き、やがてハンスは明るい光につつまれました。
ついに、岩がはずれたのです。
森は緑(みどり)でまぶしく、花も草も一本一本かがやき、うれしそうに風にゆれています。
「ああ、なんてすてきなんだろう」
ハンスはむねいっぱい、森の空気をすいました。
そして、すぐにかけ出しました。
ハンスは走り続(つづ)けて、小さな炭焼(すみや)き小屋(ごや)につきました。
「すみません、水を一杯(いっぱい)飲(の)ませてください」
いきなり入ってきた若者(わかもの)に、炭焼(すみや)き小屋(ごや)の夫婦(ふうふ)はビックリしましたが、ハンスの肩(かた)に、いなくなった自分の子どもとおなじホクロがあるのを見つけて、おどろきの声を上げました。
「ああっ、お前は、私(わたし)たちの息子(むすこ)ハンスにちがいない」
ハンスの方も、ビックリです。
「お父さん、お母さん!」
髪(かみ)は白くなったけれど、小さかったころかわいがってくれた、やさしいお父さんとお母さんです。
その日からハンスは、お父さんやお母さんと一緒(いっしょ)に、炭焼(すみや)きの仕事(しごと)を始(はじ)めました。
でもしばらくすると、どこか広い世界(せかい)へ行き、自分の力をためしたくてたまらなくなりました。
「ぼくを旅(たび)に出してください。必(かなら)ずもどって来ます」
ハンスがたのむと、お父さんもお母さんも、気持(きも)ちよくうなずいて、見おくってくれました。
ハンスは、しばらく国中を旅(たび)しました。
そうして、そろそろはたらき口を見つけようと、大きな農家(のうか)にたのみました。
農家(のうか)の主人(しゅじん)は、ハンスの丈夫(じょうふ)そうな体を見て、果物畑(くだものばたけ)の仕事(しごと)をまかせることにしました。
ハンスはリンゴ畑(ばたけ)へ行き、次々(つぎつぎ)とリンゴを取(と)るはずでしたが、力がありすぎるため、ちょっとリンゴを引っばると、木の枝(えだ)が、バキバキと、おれてしまうのです。
「だんなさま、リンゴの木は、みんなくさっています」
ハンスが言うと、主人(しゅじん)はおこるよりもおどろいて、
「何という、力持(ちからも)ちだ。お前には森の木をたおしてもらおう」
と、ハンスにオノを渡(わた)しました。
でも、ハンスはオノなどは使(つか)わずに、木から木へクサリをつなぎ、「エイッ!」と引っぱりました。
そのとたん、木はドスンドスンとたおれるのです。
主人(しゅじん)も、仕事(しごと)なかまもビックリです。
「あんな力持(ちからも)ちがいたら、何をされるかわからない」
「そうだ、ハンスをおこらせたら、殺(ころ)されてしまうかもしれない」
そこで、みんなでハンスをやっつけてしまおうと、相談(そうだん)しました。
そしてある日、主人(しゅじん)が言いました。
「ハンス、井戸(いど)の中にかくしてある宝(たから)をとって来ておくれ」
「はい。わかりました」
ハンスは、喜(よろこ)んで井戸(いど)の中におりました。
でもそのとたん、主人(しゅじん)も仕事(しごと)なかまも、ハンスめがけて大きな石を投(な)げつけたのです。
でも、ハンスにはいたくもかゆくもありません。
ハンスは、井戸(いど)の底(そこ)から主人(しゅじん)にこう言いました。
「宝(たから)ものは見つかりませんよ。いまから上にあがりますから、井戸(いど)の入り口であばれるニワトリをどかしてください。さっきからゴミが落(お)ちてきて、目にはいってかゆいんですよ」
主人(しゅじん)たちは、あわてて石を投(な)げるのをやめました。
大きな石をゴミだというハンスには、とうていかないません。
主人(しゅじん)はハンスにお金をたくさんあげて、出ていってもらうことにしました。
仕事(しごと)をなくしたハンスが、ションボリ歩いていると、お城(しろ)のまどから町をながめている、うつくしいお姫(ひめ)さまの姿(すがた)が見えました。
「ああ、なんて美(うつく)しいんだろう。でも、なぜあんなに、かなしそうなんだろう」
ハンスがつぶやくと、通りかかったおじいさんが教えてくれました。
「お姫(ひめ)さまは、大男と結婚(けっこん)させられるのじゃ。王さまは大男をたおしたら、その者(もの)に国を半分やり、お姫(ひめ)さまと結婚(けっこん)させるとおふれを出している。でも、今まで誰一人(だれひとり)として、大男をたおすことはできなかったのじゃよ」
「よし、それならぼくがやってみるよ」
ハンスは剣(つるぎ)と、かぶとと、よろいを買って身(み)につけると、そのままお城(しろ)にむかいました。
そして、王さまに、
「ぼくが、大男をたおしてみせます!」
と、言ったのです。
ハンスは元気よく、大男の住(す)む森へ出かけて行きました。
大男は、ハンスを見ると、フンと鼻(はな)で笑(わら)いました。
そして大きな剣(つるぎ)を、グサリと土につきさしました。
「お前に、この剣(つるぎ)が引き抜(ひきぬ)けるか?」
するとハンスは、その剣(つるぎ)をスルリと土から引き抜(ひきぬ)くと、空にむかって投(な)げました。
大男の剣(つるぎ)は青空でキラリと光り、大男の目の前にまっすぐ落(お)ちてきて、そのまま土にささりました。
「じゃあ、次(つぎ)はこれを抜(ぬ)いてみてください」
大男は汗(あせ)だくになって、なんとかその剣(つるぎ)を引き抜(ひきぬ)きました。
(こいつには、美(うつく)しい姫(ひめ)をとられるかもしれない)
大男は急(きゅう)にやさしい顔になり、ハンスに言いました。
「なあ、俺(おれ)の宝(たから)は全部(ぜんぶ)お前にやろう。しかし、姫(ひめ)だけは俺(おれ)にくれないか?」
ハンスは、大きく首を横(よこ)にふりました。
「いやです。姫(ひめ)は、ぼくの結婚(けっこん)する相手(あいて)だ!」
ハンスはそう言いきると、大男にむかって行きました。
そして大男の頭を思いっきりなぐると、一発(いっぱつ)でたおしてしまったのです。
ハンスが大男をたおしたのを知り、王さまは大喜(おおよろこ)びです。
お姫(ひめ)さまも、ハンスのように強くて勇敢(ゆうかん)な男の人と結婚(けっこん)できることを、心の底(そこ)から喜(よろこ)びました。
ハンスは、お姫(ひめ)さまとすぐに結婚式(けっこんしき)をあげました。
それから、お父さんとお母さんの待(ま)つ炭焼き小屋(すみやきごや)へ、お姫(ひめ)さまをつれて行きました。
お父さんもお母さんも、飛(と)び上って喜(よろこ)びました。
つぎにハンスは、お姫(ひめ)さまと家来(けらい)を連(つ)れて、森へ出かけました。
「いったい、どこへいらっしゃるの?」
そうたずねるお姫(ひめ)さまに、ハンスは答えました。
「もう一人の、お母さんのところさ」
ハンスの行ったところは、森の中の大きなほら穴(あな)でした。
ほら穴(あな)には、クマが今にも死(し)にそうに、横(よこ)たわっていました。
ハンスはお姫(ひめ)さまの手をひいて、クマのそばへ行って、やさしく言いました。
「お母さん、ぼくをそだててくれてありがとう。おかげでぼくは力のある男になり、お姫(ひめ)さまと結婚(けっこん)することができました」
するとクマはうす目をあけ、涙(なみだ)を一すじ流(なが)しました。
クマはハンスがもどって来たことを、心から喜(よろこ)んで泣(な)いているのです。
そして、ハンスに体をなでられながら、天国へ旅立(たびだ)ったのです。
ハンスはお姫(ひめ)さまと二人でクマのお墓(はか)(はか)をつくりました。
それから、炭焼(すみや)きのお父さんとお母さんをお城(しろ)へ連(つ)れて帰り、みんなで仲良(なかよ)くくらしました。
おしまい
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