１ねんせいのせかいむかしばなし



ごせんぞさまは　みんなタマゴ
ケニア の むかしばなし → ケニア の せつめい

　むかしむかし、　１わの　メンドリが、　エサをさがしに　かわにおりてきました。
　このかわには、　おおきなワニが　１ぴきすんでいます。
「なかなか　うまそうなメンドリが　いるわい。　よし、　あしたは　あれを　つかまえて　くってやろう」
　よくあさ、　ワニは　かわのちかくの　しげみのなかに　かくれて、　メンドリが　かわにやってくるのを　ジッと　まちました。
　そんなこととは　しらずに、　メンドリは　うたいながら、　いつものように　かわに　おりてきました。
「しめた！」
　ワニは　いきなりしげみから　とびだして、　おおきなくちを　あけて　いいました。
「やいやい、　メンドリ。　おとなしく　おれに　くわれてしまえ！」
　メンドリは　ビックリして、　すぐに　にげようとしましたが、　でも、　とてもにげられないと　わかると、
「どうか　わたしを　たベないで！　おねがい　ワニの　おにいさん」
と、　さけびました。
　おにいさんと　いわれて、　ワニは　ビックリ。
(どうして、　おれが　にいさんなんだろう？)
　ワニが　くびをひねっているうちに、　メンドリは　にげてしまいました。
「あいつ、　おれを　おにいさんだなんて。　・・・まてよ、　きっと　ききまちがいだな」
　でも、　どうしても　きになるので、　ワニは　もういちどためしてみることに　しました。
　つぎのあさ、　ワニは　かわらのしげみに　かくれて、　メンドリがくるのを　まちました。
　すると　メンドリが、　エサをつっつきながら　やってきました。
　 ワニは　おおきなくちを　あけて、とびだしました。
「やいやい、　きのうは　うまくおれからにげたな。　でも、　きょうは　かくごしろ！」
「どうか、　わたしをたベないでおくれ。　ワニの　おにいさん」
「？？？」
　こんどこそ、ききまちがいでは　ありません。
　ワニが　まごまごしていたので、メンドリはまた、にげていってしまいました。
　あるひワニは、　なかよしの　おおトカゲに　あいました。
「これは、　いいところであった。　おまえに　ちょっときいてもらいたいことが　あるんだ」
「いったい、　どうしたんだい？」
「このあいだ、　うまそうなメンドリを　みつけたんだ。　そいつを　くってやろうとすると、『しょくベないで、おにいさん』と、いいやがる」
「おにいさんだって？」
　おおトカゲは、　わらいながら　いいました。
「そりゃ、　にいさんには　ちがいないなあ」
「？？？」
　ワニは、　ふしぎそうに　たずねました。
「いったい、　それはどういうわけだい？　どうしてこのおれが、　メンドリの　にいさんなんだい？」
「いいか。　カモは　なにから　うまれる？」
「カモねえ。　それは　タマゴだな」
「では、　カメは？」
「ううむ、　それもやっぱり、　タマゴさ」
「じゃあ、　おれは？　おまえは？」
「きまっているじゃないか、　タマゴだよ」
　おおトカゲは、　ニヤリわらって、
「それじゃ、メンドリは　なにから　うまれるとおもう？」
「ううむ、　やっぱり　タマゴだ」
「どうだい、　わかったかい？　おれたちは　みんなタマゴから　うまれたんだ。　だからみんな　きょうだいなのさ。　メンドリが　いうように、おまえは　にいさんに　ちがいない。　わかったか？」
「ふうん、　タマゴから　うまれたきょうだいねえ。　きょうだいとなると、　たべるわけには　いかないな」
　それからはワニは、　けっして　メンドリをたベなかったそうです。

おしまい