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12月8日の世界の昔話
ムギの穂
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むかしむかし、神さまが地上をつくったばかりのころのお話です。
地上は、いまよりもずっとみのりゆたかで、ムギの穂(ほ)にはムギつぶが、今のような五、六十ではなく、五、六百もついていました。
なにしろくきには、上から下までビッシリとムギつぶがついていたのです。
だけど、人間というものはあんまりしあわせすぎると、しあわせが神さまからくることをわすれてしまい、とても物をそまつにしてしまいます。
ある日のこと、女の人が子どもをつれて、ムギ畑のそばをとおりすぎました。
子どもは、とんだりはねたりして歩いていましたが、水たまりに足をすベらせてしまい、服をよごしてしまいました。
すると、お母さんは美しいひとにぎりのムギの穂をむしりとって、それで子どもの服のよごれをおとしました。
ちょうど神さまがそこをとおりかかって、これを見るとおこっていいました。
「もうこれからは、ムギのくきには穂がつかないぞ。人間どもは天のおくりものをもらう資格などありはしない」
すると、そばでそれをきいていた人たちがひざまずいて、
「どうかムギの茎に、すこしでもかまいませんから、穂をのこしておいてくださいまし。わたしども人間には、そうしていただく資格がないにしても、罪のないニワトリたちのためにおねがいいたします。でないと、ニワトリたちはおなかをヘらして死んでしまいます」
神さまは、人間たちのたのみをききとどけました。
ムギの穂が、いまのように上のほうだけのこっているのは、このためです。
おしまい