5月20日のイソップ童話
野ネズミと家ネズミ
野ネズミと家ネズミとは、とてもなかよしでした。
家ネズミは友だちの野ネズミによばれて、ごちそうになりに、いそいそと野へ出かけました。
ところがオオムギとコムギばかり食べさせられたので、こう言いました。
「これじゃあ、きみ、まるでアリの生活だ。うちへくれば、うまいものがいっぱいあるから、いっしょにきて、なんでもおあがりよ」
そこで2匹は、すぐさま出かけました。
そして家ネズミが見せたのは、マメやムギのほかに、ヤシの実や、チーズや、ハチミツや、くだものでした。
そこで野ネズミはビックリして、家ネズミのくらしをたいそうほめて、身のふしあわせをなげきました。
さて、いよいよごちそうに手を出そうとしたとき、きゅうに人間が戸をあけました。
ネズミはおくびょうですから、2匹ともその音におどろいて、壁のわれめに飛び込みました。
しばらくして、こんどこそごちそうを食べようとしましたが、またべつの人が部屋の中へ入ってきました。
それを見て、ネズミはまた、穴に飛び込んでかくれました。
そこで野ネズミは、おなかのすいたことなど忘れて、ためいきをつきながら家ネズミにいいました。
「さようなら。きみは、あぶないめや、こわいめにさんざんあいながら、腹いっぱい食べて、きげんよくそれを味わっているが、わたしはいくらみじめでも、こわいめにあわずに、オオムギやコムギを食べて、のんきにくらしていくよ」
ビクビクしながらぜいたくするよりは、質素でも、のんびり生きているほうがいいのです。
おしまい
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