5月20日の日本の昔話
ウシのはなぐり
むかしむかし、きっちょむさん(→詳細)と言う、とてもゆかいな人がいました。
きっちょむさんは、あまりお金持ちではありませんが、お金がなくなってくると、ヒョイと、いいちえがうかんでくるのです。
ある日のこと、きっちょむさんは畑しごとをしながら、町へいく、とおりがかりの人をよびとめては、
「すまんが、町のあらものやで、ウシのはなぐりをかってきてほしいんじゃ。かずは、いくつあってもいい。ねだんは、なんぼ高くてもかまわん」
と、へんなことをたのみました。
みんながひきうけてくれましたが、かえってきて、
「あいにく、うりきれとるそうじゃ。ウシのはなにつなをとおす、はなぐりのわなど、めったにうれるもんではないから、ふだんはおいてないそうじゃ」
「おれもずいぶんさがしたが、ひとつもなかった。『きょうはいく人も、はなぐりをほしいという人がきた。こんなことなら、たくさん、しいれておけばよかった』と、くやしがっとったわい」
と、口ぐちにいいました。
「それはどうも、すまんことじゃった」
きっちょむさんは、ガッカリするどころか、よろこびながらうちにかえりました。
さて次の朝、きっちょむさんは、つくってためておいたウシのはなぐりを、町へかついでいって、
「ウシのはなぐりはいりませんか?」
町中のあらものやをまわりました。
「これはいいところにきてくれた。いくつでもおいていってくれ」
きのう、もうけそこなっているので、どこのあらものやでも、よろこんでしいれてくれました。
「さあ、これで、きのうのお客がきてくれれば、ひともうけできるぞ」
あらものやは、もうけのそろばんをはじきましたが、ウシのはなぐりは、さっぱりうれません。
もうかったのは、きっちょむさんだけでした。
おしまい
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