きょうの日本昔話
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5月10日の日本の昔話

あまのじゃくくらべ

あまのじゃくくらべ

 むかしむかし、彦一(ひこいち→詳細)と言う、とてもかしこい子どもがいました。
 彦一の村に金作(きんさく)という、つむじまがりのおじいさんがすんでいました。
 人が山といえば、川というし、右といえば左といいます。
 どうしようもなくあまのじゃくで、がんこなおじいさんでした。
 村の人たちは、すっかりこまりはてて、ある日、彦一のところにやってきました。
「のう、彦一。おまえさんのちえで、金作じいさんのつむじまがりをなんとかなおしてくれないか」
 彦一は、ちょっと考えていましたが、
「わかった。おらにまかせておくれ」
と、ニッコリ笑ってこたえました。
 あくる日、彦一は金作じいさんのところへやってきていいました。
「こんちは、金作じいさん。いい天気だね」
「おう彦一か。なにが、いい天気なもんか。こんなに日ばかりてっていては、道がかわいて、ほこりがたってしょうがないわい。雨でもふりゃあいいんだ」
「あらら、さすがは、あまのじゃくで有名な金作じいさんだね」
 彦一はニヤニヤしながら、
「ねえ、じいさん。あしたからおれと、あまのじゃくくらべをしようじゃないか」
「なに、あまのじゃくくらべだと」
 金作じいさんは、うれしそうに、彦一の方を向きました。
「そうだよ。なにをいっても『うん』ってへんじをしないで、はんたいのことをいうのさ」
「アハハハハハッ。バカなやつじゃ。わしゃ、子どものころからのあまのじゃく。おまえがいくらとんち小僧といっても、あまのじゃくくらべで、わしにかなうわけがなかろう」
「さあね。かなうかかなわんか、あしたからくらべっこしよう」
「ようし。まけてなきべそかくな。わしにまけたら、もう、とんち小僧なんていわせんぞ」
「いいとも」
 さて、あくる日のことです。
 金作じいさんは、川へさかなをつりにいきました。
「ほう、きょうはようつれるわい」
 すぐに、カゴにいっぱいのさかながつれました。
「ずいぶんつれたぞ。さて、帰るとしようか」
 金作じいさんは、つりざおをしまうと、さかながいっぱい入ったカゴをぶらさげて、帰ろうとしました。
 そこへ、彦一がやってきて、
「やあ、じいさん、さかなつりかい?」
と、ききました。
『うん』と、こたえたら、あまのじゃくくらべにまけてしまいます。
 そこでじいさんは、
「なあに。さかなをすてにきたのさ」
と、こたえて、さかなの入ったカゴをポンと投げすてました。
 すると彦一は、ニッコリ笑って、
「もったいない。すてたさかななら、おらがひろっていこう」
と、さかなのカゴをかついで、さっさといってしまいました。
「彦一め! よくもやったな」
 金作じいさんは、腹がたってなりません。
 そのあくる日。
 金作じいさんは、彦一が田んぼでイネかりをしているのをみつけました。
「しめたぞ。あのイネをとりあげてやろう」
 金作じいさんは、ノコノコと彦一のところへやってきて、
「おう、彦一。イネかりか?」
と、声をかけました。
 彦一も、ここで『うん』と、いったらまけになるので、
「いいや、イネすてだよ」
と、こたえました。
 それをきいて金作じいさんは、うれしそうにわらって、
「ほう、すてたイネなら、わしがひろっていこう」
と、彦一がかったイネを、みんなかついで、村のほうへもっていってしまいました。
 けれども彦一は、平気な顔で、おじいさんのあとについて歩くのです。
 そして、じぶんの家の前までくると、
「金作じいさん。おらのたんぼにイネをひろいにいったのかい?」
と、いいました。
 金作じいさんはすかさず、
「いいや。イネかりにいったのさ」
と、こたえました。
「アハハハハハッ。かりたものなら、かえしておくれよ」
 彦一はそういって、イネをみんなとり返してしまいました。
 金作じいさんは、彦一のイネを、田んぼから家まではこんでやったようなものです。
 さすがの金作じいさんも、これにはすっかりまいってしまいました。
「いやいや、おまえはたしかに、たいしたとんち小僧だ。この勝負は、わしの負けだ。もう、あまのじゃくはいわないことにするよ」
 金作じいさんは、それからはすっかりすなおな、よいおじいさんになったということです。

おしまい

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