8月8日の日本の昔話
どっこいダンゴ
むかしむかし、ある村に、のんきなひとりぐらしのたつ平という男がおりました。
村の人たちが心配して、嫁さんを見つけてきたのですが、これがなかなか頭のよい、はたらき者の嫁でした。
「ねえ、あんた、土地はいくらでもあるんだし、畑や田んぼをつくったらどうじゃろう?」
「おらあ、めんどうなことはきらいじゃ。いまのまんまでええ」
たつ平は嫁さんをもらってものんきで、くらしをかえようとはしません。
ある日たつ平は、嫁さんの里に用事があって出かけることになりました。
嫁さんに教えられた道を、えっちらおっちらのぼって、ようやく嫁さんの里につきました。
「遠い道で、さぞはらがへったじゃろう。さ、たんと食べてくれろ」
嫁さんのお父さんは、お茶とダンゴでもてなしました。
「どうじゃ、ダンゴのあじは?」
「う、うめえ〜! こんなうまいもん、おらはじめてじゃ。こりゃ、いったいなんというもんじゃ?」
「これはな、ダンゴじゃよ。おまえとこに嫁にやった娘は、ダンゴづくりがとてもうめえはずじゃがのう」
「えっ、おらの嫁がこれをつくれるんか? ちっとも知らなんだわい。モグモグ、う〜ん、うめえ」
「そんなにうまけりゃ、家に帰って嫁につくってもらうとええ」
「ようし、すぐこしらえてもらうだ。ところで、このうめえもんは、なんちゅうものだっけ?」
「ダンゴじゃよ。ダ、ン、ゴ」
たつ平は、わすれてはいかんと、その名をいいながら帰りました。
「ダンゴ、ダンゴ、ダンゴ、ダンゴ」
山をこえ、川をわたり、ダンゴを食べたいたつ平は、
「ダンゴ、ダンゴ」
と、いいつづけながら、ようやく村へもどってきました。
そして、もうすぐわが家というところまできたとき、
ドッシーン!
「あいたたた・・・」
「あれ。庄屋(しょうや→詳細)さま」
道の曲がり角で、いきおいよく走ってきたたつ平は、庄屋さんにぶつかってしまいました。
庄屋さんはころんだひょうしに、みぞにおしりをつっこんで出られません。
「いきなりとびだすやつがあるか! はよ、おこさんかい!」
たつ平は、庄屋さんの手を引っぱりますが、なかなかぬけません。
「それ、どっこいしょ、ダンゴ」
「なにがダンゴじゃ。しっかりせえ」
「う〜ん、ダンゴ、どっこいしょ。おおっ、ぬけた、ぬけた、どっこいしょと」
たつ平は、庄屋さんには目もくれず、家のなかに飛び込みました。
「どっこいしょ、どっこいしょ、どっこいしょ、どっこいしょ」
家についたたつ平は、嫁さんの顔を見るなり、
「どっこいしょをつくってけろ!」
「へっ?」
嫁さんは目をパチクリ。
「どっこいしょだと? なんじゃそりゃ、おら聞いたこともねえが」
「そんなはずはねえ。おめえはどっこいしょをつくるのがうめえって聞いたんじゃ。はようつくれ」
「そういわれても、知らんものはつくれんよ」
「はよう、どっこいしょが食いてえ!」
たつ平は、おもわずゲンコツで、嫁さんの頭にポカリ!
「いたたた、ほれ、みなされ、らんぼうしよるから、こんな大きなダンゴみてえなこぶができちまった」
「ダンゴ? そうじゃ! ダンゴじゃ、ダンゴが食いたいんじゃあ」
でも、嫁さんは、
「うちじゃ、ダンゴはつくれん。ダンゴはな、米やアワやらキビを粉にしてつくるもんじゃからな」
「そうか、おらのとこにゃ、イモしかねえもんな」
たつ平はガッカリです。
すると嫁さんは、たつ平の手をとって。
「だから、おら、畑や田んぼをつくろうというたんじゃ。さあ、はよ、つくろう」
と、いうわけで、たつ平と嫁さんは二人で畑をたがやして、田んぼづくりにはげむようになりました。
おかげでたつ平の家はお金持ちになり、二人はいつまでもしあわせにくらしたということです。
もちろん、大好きなダンゴも、まいにち食べています。
おしまい
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