8月30日の日本の昔話
身代わり地蔵
大分県の民話
むかしむかし、高田庄中津留村(たかだのしょうなかつるむら)いうところに、年を取った母と息子が二人で暮らしていました。
息子は親孝行な上に信仰深く、毎日近くの地蔵堂にまいっては手を合わせるのです。
ある日の事、母親が重い病いにかかりました。
息子は懸命に看病するのですが、母親の病気はいっこうに良くなりません。
そんなある晩、母が急に、
「ああっ、ウリが食べたい」
と、息子に言ったのです。
ですが貧しい息子の家には、ウリを買うお金などありません。
あれこれと悩んだ息子は、とうとうウリ畑に忍び込むと、母親に食べさせるためにウリを盗んでしまったのです。
そして次の晩になると、母親はまたウリが食べたいと言い出すのです。
息子は今度限りと、仕方なくまた瓜畑へと出かけて行ったのでした。
だけど運の悪い事に息子は畑の主人に見つかってしまい、怒った主人に持っていた刀で肩を斬られてしまったのです。
「ウギャーーー!」
息子は悲鳴をあげると、そのまんま気を失ってしまいました。
しばらくしてハッと目をさました息子は、斬られた肩に手をやりましたが、不思議な事にどこにも斬られた跡がありません。
「おかしいな。夢だったのか?」
息子は頭をかしげながら、家に帰りました。
さて次の日の朝、いつものようにお地蔵さまにお参りした息子は、ふとお地蔵さまを見て、あっと声をあげました。
なんとお地蔵さまの肩のところに、刀で深く斬られた跡があるではありませんか。
「ああ、このお地蔵さまが、わしの身代わりになって下さったのか」
息子は深々と頭を下げて、お地蔵さまに手を合わせました。
やがてこの話しは広まり、このお地蔵さまは『身代わり地蔵』と呼ばれて、お参りをする人がいつまでも絶えなかったということです。
おしまい
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