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10月12日の日本の昔話

手土産のウナギ

手土産のウナギ
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 むかしむかし、ある百姓の若者が商人にあこがれて、自分も何か商売をやってみようと思いました。
 でも、商売をするには元手となる資金が必要です。
「困ったな、おれみたいな貧乏人には、誰も金を貸してくれないし」
 色々考えた若者は、村の長者に頼んでみようと思い、手土産に大きなウナギを桶に入れてかついで行きました。
 長者の家に着くと、若者は手土産のウナギを長者に差し出して、さっそく長者にお願いしました。
「わたしは青森の八戸に行って、馬を十二頭ほど買ってきたいのです。そのお金を貸していただけませんか。必ずお返ししますので」
 黙って話を聞いていた長者は、若者に言いました。
「話しはわかりましたが、あなたと直接話しをするのは、今日が初めてです。そんなあなたに、お金を貸す事は出来ません」
「・・・そうですか。では、失礼します」
 あきらめた若者は、土産に持ってきたウナギをかついで、長者の屋敷を出て行きました。
 すると、長者の家の下男が追いかけて来て、若者に言いました。
「旦那さまがお呼びでございます。もう一度、お戻り下さい」
 そして再び座敷に通されると、長者が言いました。
「わたしのところへお金を借りに来る人はずいぶんいますが、持ってきた土産を持ち帰ったのはお前が初めてだ」
「すみません。このウナギは、次に頼む人への土産にします」
「なるほど。物を無駄にせず、使える物は何度でも使う。どうやら、商売の基本は知っている様だな。・・・よし、お前に、お金を貸してやろう」
「本当ですか! ありがとうございます」
 こうしてお金を借りた若者は、大喜びで長者の家を飛び出すと、すぐに八戸へ行って馬を十二頭買いました。
 そしてその十二頭の馬を村人たちに売ると、もうかったお金でまた馬を買い、隣の村まで売り歩きました。
 これを繰り返して大金を手にした若者は、借りたお金を長者に返すと、残ったお金を元手に立派な商人になったそうです。

おしまい

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